「著作権者の権利」は日本では特に強い
アートの世界ではさまざまな課題がまだ残されています。現状、大きく議論されるべきポイントに、著作権と追及権があります。
著作権については、日本ではとくに著作権者の権利が認められていて、ほとんどの判例で著作権者である作家やアーティストの権利が保護されています。写真でもイラストでも、誰かの作品を商業利用する場合には、著作者の許諾が必要です。また、作家やアーティストは、著作権料を請求できる権利があります。
しかし、作家活動をしながら、著作権を管理することは時間的にも手続き的にも非常に面倒なことです。近頃は、作家やアーティストの著作権を管理する団体にすべての著作権管理を任せている人も多くなっていて、管理団体の力が年々強まっています。
作品の画像などの商業利用に関しては、売れている作家の場合、自分の作品画像を勝手に利用されないために、自身のブランディングを含めてさまざまなリスクを考慮して、著作権の行使を真剣に考えなければいけません。
しかしまったく無名な作家だと、仮に無断使用であったとしても自分の作品を使ってほしいという人もいます。それゆえ、著作権についても無料で許諾する作家も数多くいて、著作権の行使も作家の実力がモノを言うことになります。しかも、このインターネットの時代、自分の作品がどこでコピーされ、勝手に使われているかもわからないことが多くなっています。
NFTのような技術が普及して、所有権の特定はできますが、いつでもコピーされる著作権の問題は、著作権者にとっても、利用する側にとっても、慎重な対応が必要なことは間違いありません。
“日本にはない”追及権とは何か? その仕組みと重要性
次に、追及権について説明しましょう。
これは、作家が有名になり、アート作品の価格が高騰することにより起こる問題です。昔の価格で売却した自分の作品が年月を経て、オークションなどで高額な落札がなされても、作家には1円も入らないという事実です。
自分の作品が高額に取引されるにもかかわらず、自分は指をくわえて見ているだけという現状を理不尽に感じるアーティストもいると思います。
反対に、そのように高額で取引されるようになったのであれば、新作を高く販売することができるので、アーティストに1円も入らなくても十分に報われているという理屈もあります。しかしアーティストから見れば、自分の作品がコレクターの世界だけで渡り歩いて、コレクターが大きな利益を享受しているのに、自分は何も得ることができないのは不公平だと思うこともあるでしょう。
今のところ、アメリカ、中国、日本ではこの追及権を認めていませんが、ヨーロッパやイギリスは、比較的この追及権には寛容で、二次流通で販売された作品の金額の4%程度を作家に還元している例もあるようです。