(※写真はイメージです/PIXTA)

配偶者や子供がいない「おひとり様」の老後は、自らの資産を増やすことで「老後破綻」を回避できると経済アナリスト兼FPである佐藤健太氏は言います。本稿では、実際に起こり得る「生涯独身の“おひとり様”が陥る老後破綻ルート」について、佐藤氏の著書『銀行預金しかないあなたのための 何歳からでも間に合う初めての投資術』(ワニブックス)より、一部抜粋して紹介します。

では、「おひとり様」のシニア女性は700万円近い赤字に耐えることができるのでしょうか。

 

金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査」(2021年)によると、単身世帯の平均貯蓄額は60代で約1,860万円に上っています。中央値は約460万円です。70代は平均約1,790万円で、中央値は約800万円。

 

退職金や親からの相続・贈与などによって、年を重ねるごとに平均値・中央値とも増えており、これを考えれば何とか「老後破綻」を招かずに生活することができそうだと言えます。

 

問題となるのは、女性の「おひとり様」が会社員として厚生年金に加入している期間が短かったり、国民年金のみの加入だったりする場合です。女性の厚生年金受給額は「5万~10万円」が約4割と最も多くなっています。国民年金(老齢基礎年金)の受給額は月額6万5,000円(満額)、平均は約5万6,000円です。

 

仮に「おひとり様」の収入が月5万6,000円のみであれば、1ヵ月で7万7,000円の赤字が生じることになります。1年間で92万4,000円、25年間では約2,310万円のマイナスとなります。このレベルまで不足することになれば、それまでの貯蓄額で対応するのが難しいことは明らかでしょう。

元気なうちに資産を増やして「老後破綻」を回避

「老後破綻」を回避するためには、自らの資産を増やしておくしかありません。配偶者や子供がいなければ生活費は少なく、子育てに伴う教育費もかからないはずです。自営業やフリーランスの人は現役時代の貯蓄額を増やす必要があります。

 

先の金融広報中央委員会の調査によれば、単身世帯は手取り収入の14%と2人以上世帯(11%)と比べて貯蓄に回している割合が多いことが分かります。定年がない分、高齢者となっても働き続けることはできますが、何が起きるのか分からないのが人生です。元気なうちに資産を増やすことが大切と言えます。

 

60歳以降も会社で働く人は厚生年金の加入期間を延ばし、70歳や75歳まで年金受給開始を「繰り下げ」にすると老後リスクを軽減することができるでしょう。「えっ? 厚生年金の人は安心じゃないの?」と思われるかもしれませんが、老後は病気を患う可能性が高まり、要介護状態になることも考えられます。

 

公益財団法人生命保険文化センターの調査(2021年)によれば、介護が必要となった場合の費用は月に約8万3,000円です。介護施設に入ることになれば特別養護老人ホームでも月10万円近くの費用が必要になります。持ち家、賃貸物件に住んでいるといった条件でも支出額は大きく違ってきますので油断しない方がよいでしょう。

 

「老後」に定義はありません。自分の好きなタイミングにずらすことができるということです。後悔しないためにも「老後」に向けた計画を立て、破綻を回避できるように備えていくことが重要です。

何歳からでも間に合う初めての投資術 - 銀行預金しかないあなたのための -

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佐藤 健太

ワニブックス

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