【知ってるつもりの経済用語】「GDP(国内総生産)」…どうやって求めるの?〈計算方法を解説〉

【知ってるつもりの経済用語】「GDP(国内総生産)」…どうやって求めるの?〈計算方法を解説〉
(画像はイメージです/PIXTA)

経済規模や経済成長率を端的に表す指標、GDP(国内総生産)。経済用語の基本中の基本ですが、この数値がどのような計算から導かれているのか、ご存じない方も多いようです。計算方法を見てみましょう。※本記事は、東洋大学経済学部教授・川野祐司氏の『これさえ読めばサクッとわかる 経済学の教科書』(文眞堂)より抜粋・再編集したものです。

「産出」-「中間投入」=「GDP(総付加価値)」

経済の大きさを測る方法はいくつかあります。企業の生産額を国全体で足す方法が考えられ、産出といいます。分かりやすい方法ですが、工業製品などは部品の生産額が何重にも計算されるという問題があります。

 

[図表]材料の二重計算を防ぐ

 

この例では、生産額の合計は350になります。パンの生産額200のうち150は製粉業者や酪農業者の生産額としてすでにカウントされており、生産額をカウントすると小麦粉やバターは二重計算されることになります。産出から原材料の中間投入を引いた付加価値を使えば二重計算の心配はなくなります。国全体では、

 

総付加価値=(産出)-(中間投入)

 

と計算されます※1。総付加価値を国内総生産GDPといいます※2

 

※1 付加価値は新たに付け加えられた価値を表すため、中古品の売り上げは付加価値に含みません。中古品は新品を作った時点ですでに付加価値として計算されているためです。ただし、中古品の修理は付加価値とみなします。また、土地の売買も付加価値には含めません。

 

※2 GDPは市場価格で測ることを原則としていますが、市場価格を把握することが難しいもの、国による慣行の違いに対して工夫が施されています。代表的なものに帰属計算があります。農家が作った作物を自分で食べた場合や持ち家の家賃では支払いが発生しませんが、自分で自分に支払ったという前提でGDPの計算に含めます。一方、主婦(主夫)の家事労働はサービスとしてGDPに含めるべきですが、計算が困難であることからGDPには計上しないことになっています。

GDPの計算式は3通りある!

付加価値を生み出すのは企業です。企業が生み出した付加価値は、従業員の賃金や政府への税金などに分配され、分配されたお金は消費や投資などに使われます。企業が生み出した付加価値を分かち合う場面でもそれを使う場面でもGDPを計算することができます。つまり、GDPの計算式は3通りあります。

 

生産面:GDP=(産出)-(中間投入)

 

分配面:GDP=(雇用者報酬)+(営業余剰)+(固定資本減耗)+(間接税-補助金)

 

支出面:GDP=(消費)+(投資)+(政府支出)+(輸出-輸入)

 

GDPは3つの面のどの式を使っても等しくなります。これを三面等価の法則といいます※3

 

※3 3つのGDPはそれぞれ異なる統計を基にして計測されているため、計算結果がずれてしまうことがあります。これを統計上の不突合といい、分配面の式に加えます。

 

分配面の式を見てみましょう。雇用者報酬は賃金として支払われたもので家計が受け取ります。営業余剰は企業内に蓄えられるお金で、内部留保とも呼ばれます。固定資本減耗は設備などの固定資本の購入費用であり、減価償却費とも呼ばれます※4。間接税は政府が受け取ったお金、補助金は政府が支払ったお金です。こうして、企業が生み出した付加価値は、家計、企業、政府に分配されます。

 

※4 固定資本の購入価格は高いため、会計上、費用を複数年に分散させて支払ったことにします。このような会計処理を減価償却といいます。1億円の機械を購入する場合、購入年に1億円支払いますが、会計上は10年にわたって毎年1000万円ずつ支払ったことにします。2年目は実際には機械への支払いがありませんが(1年目に1億円支払っている)、1000万円分の購入費用を計上します。この1000万円が固定資本減耗になります。

 

(間接税-補助金)を純間接税ということもあります※5。「純」は英語でnetといい、「差し引きをした」という意味で用いられます。小麦粉の袋にはNET 1Kgと書いてありますが、これは全体の重さから袋の重さを差し引くとちょうど1Kgだということを表しています。

 

※5 企業が支払う法人税は直接税で消費税などの税金が間接税であるため、分配面の計算式での間接税という用語は誤解を招きやすい表現です。そこで、実務や政府公表値では「生産物・生産に課される税・補助金」という呼び方を使います。

 

支出面の式はよく使いますので、アルファベットでも覚えておきましょう。

 

Y=C+I+G+(X-M)

 

GDPをYとおき、消費や投資など英語の頭文字を使っています。輸出と輸入の部分にはカッコが付いていますが、なくてもかまいません。C+I+Gは国内要因で決まるので内需、X-Mは外国要因で決まるので外需ともいいます。輸入にマイナスが付いていますが、輸入元の国のGDPにプラスで計算されています。貿易に関する部分は世界全体を足すとゼロになるように作られています。

 

CHECK POINT

 

投資は以下の3つの項目からなっています。

 

(投資)=(設備投資)+(住宅投資)+(在庫品増減)

 

投資項目のうち、(設備投資)+(住宅投資)を「総固定資本形成」といいます。住宅は家計が住む目的で購入するため消費に入りそうですが、長期に渡って住み続けることができるため投資に分類します。自動車などは耐久消費財として消費に分類します。

 

在庫投資は忘れやすいので注意しましょう。売れ残りの在庫はGDPの式に入る場所がありません。そこで、在庫は来期売るために今期多めに作っておいた、と解釈して投資の項目に含めます。

 

Exercise

 

以下の資料から政府支出を求める。

 

雇用者報酬 320 民間最終消費支出 280 総固定資本形成 140 在庫品増加 10 営業余剰 120 固定資本減耗 60 輸出100 輸入 90 間接税-補助金 20

 

~・~・~・~・~・~・~・~

 

Answer

 

・分配面の式からGDPを求める

GDP=320+120+60+20=520

 

・支出のGDPは

GDP=280+140+10+G+100-90→GDP=440+G

 

・3面等価の法則から、

520=440+G→G=80

 

 

川野 祐司
東洋大学 経済学部国際経済学科 教授

これさえ読めばサクッとわかる 経済学の教科書

これさえ読めばサクッとわかる 経済学の教科書

川野 祐司

文眞堂

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