パンデミックなどの経済変化を軽視したことで招いた失敗
~事例から「他山の石」としていただきたいこと~
事業コンセプトはとてもすばらしく未来を感じさせるものである。しかし、パンデミックなどの経済変化を織り込めていなかった結果、事業が行き詰まり、撤退となってしまった。
三菱UFJフィナンシャル・グループ「GO-NET」
DX戦略…人を介さないビジネスモデル
グローバルオープンネットワークジャパン(GO-NET)は、三菱UFJフィナンシャル・グループが米アカマイ・テクノロジーズと合弁で開始した決済のプラットフォーム。これまで暗号資産の取引決済で多く使用されてきたブロックチェーン技術を応用し、IoT(インターネット・オブ・シングズ)の決済などに利用できる安価なサービスを確立した。
暗号資産の取引はビットコインで1秒当たり7件などとかなり低速だが、GO-NETは毎秒100万件超と極めて高速であった。大量の少額決済を可能とすることで「自動車が走行している高速道路の場所をGPS(全地球測位システム)で捕捉すれば、1分ごとに課金して料金所が不要になる」(三菱UFJニコス常務執行役員の鳴川竜介CTO)とした。料金所という概念をなくし、人を介さないビジネスモデルを実現できるようなサービスを提供した。
GO-NETとは?
GO-NETは高速かつ低価格な決済プラットフォームとして三菱UFJフィナンシャル・グループがコンテンツ・デリバリー・ネット ワーク(CDN)事業者のアカマイ・テクノロジーズと開発したもの。暗号資産での利用で有名になったブロックチェーンの技術を利用す る。アカマイが各地に持つサーバーを利用することで、これまでの中央集権的なサーバーによる決済処理と比べると劇的に低コストで実現できるとした。
さらに、暗号資産の取引では毎秒十数件が常識的だった処理速度を、毎秒100万件という劇的な高速化を果たした。これは従来のクレジットカード決済の処理速度の限界(毎秒7万~8万件)をはるかに超える。将来は毎秒1000万件を目指すともしていた。
利用価格を安価にすることで、客単価が低くても顧客数を確保すれば収益を確保できるビジネスモデルを実現した。例として、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」や車のシェアリングサービスなどにGO-NETが普及すれば、高速道路での通行料金や駐車料金の支払いなどの従量課金が安価で利用できるようになり、全国銀行データ通信システム(全銀システム)などの既存システムはコスト、処理速度の両方で太刀打ちできなくなることが想定された。
失敗事象…わずか3年で早期撤収
2022年2月22日の三菱UFJフィナンシャル・グループの発表によると、客単価が低くても顧客数を確保することで数円単位の少額決済ができる想定であったが、パンデミックなどの経済変化により思ったほど需要が見込めなかった。いくら性能が高くて安価でも、クレジットカード会社などにとっては既存のシステムからの切り替えを行うには至らなかった。
またIoTでもGO-NETの高速大容量を必要とする市場を掘り起こすことができなかった。予定していた収益が確保できず、長期間の赤字が見込まれるため、わずか3年で事業を見切る早期撤収を図った。
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