転職に失敗する「典型的」なパターンとは?
転職というのは、自分の「やりたいこと」と「できること」を明確にし、ときには自分自身のキャリアの再評価や整理整頓をするなど、バランスを取りながら判断していくプロセスです。そして、「やりたいこと」と「できること」の黄金比は、年齢とともに変化していきます。
たとえば20代の中盤から30代前半くらいで、将来のエグゼクティブ候補となるポテンシャル豊かな人材であれば、「やりたいこと70%、できること30%」くらいが、キャリア評価や転職の理想的なバランスです。
そしてこのバランスは、年齢が上がるにつれて逆転していきます。
35歳を境に、7対3が3対7に逆転していくケースが多いようです。そして40歳を経過する頃には「やりたいこと」の数値はほぼ0%となり、「できること」がおおむね100%に落ち着きます。当然、転職に際しては、求職者の年齢によって企業側の物差しも変わってきます。
雇う側の論理は、求職者の年齢を軸に変化していくものだということを覚えておくべきでしょう。
転職に際しては、ビジネスパーソンとしての「やりたいこと」と「できること」を整理しておく必要があるわけですが、いま在籍中の組織のなかで「やりたいこと」がいずれ叶うならば、急いで転職する必要はないでしょう。
また、業績が悪化して賞与が削減された、気の合わない上司が赴任してきたなどの問題が起きたとしても、長い目で見て「やりたいこと」が叶いそうなのであれば、転職を急ぐ必要はありません。ちょっとした人間関係のゆがみや恵まれない職場環境など、ネガティブな動機で転職に踏み出してしまうことは、今後のキャリア形成にとって大きなリスクになる可能性すらあります。
一方で、在職中の会社に自分の「やりたいこと」が残っていたとしても、実現できそうもないケースはあります。
例えば希望する職種への異動がほぼ不可能であるとか、会社の業績が極端に不振でキャリアアップの可能性がほぼ閉ざされているとか…。そうした事情があるならば、転職を考えるべきでしょう。
こう考えると、転職とは目的ではなく、「やりたいこと」を叶えるための手段だということがわかります。
自己分析が不足している人は、この目的と手段を混同してしまいがちです。これこそが転職に失敗する典型的なパターンであり、この失敗を避けるためにも、筆者は「キャリアの棚卸し」の重要性を強調しているのです。
手段としての転職を上手く進めるには「やりたいこと」と「できること」を明確にするキャリアの棚卸しを行い、中長期的な展望を明瞭にしておくことが重要です。