上司に対する「承知しました!」で画面が埋まる
もうひとつの大きな特徴は、プライベートのみならず職場でのグルチャ立ち上げが普通に行われることだろう。
学生サークルのノリで簡単な情報交換や食事会のお知らせなどで済めば御の字だが、結局は業務連絡や指示・命令などが増えてくる。上司に対する「承知しました!」などの返しでチャット画面が埋まるのはお約束。
また、公私の垣根も越えてくる。深夜に業務命令があり、早朝に資料提出というブラックまがいのひどい組織も散見される。評価や昇進にも影響するため、チャット不参加はありえない。
日本で普通に見られる「仕事と私生活は別物」「業務時間外に上司や同僚と繋がっているのは耐えられない」との考えは中国ではまず通用しない。あぁ、キビシー。
便利なツールではあるが…“ネットリテラシー”には要注意
ご存じのように、中国ビジネスは「グワンシー(関係)」という人的ネットワークが重要視される。微信やグルチャは「現代版グワンシー」構築の格好のツールと言えよう。いわゆる「圏(サークル)」に入り込んでいかないと何も情報を得られない。
そのクローズドな空間で敏感な企業情報を漏らす内部関係者も時々いる。会話のスクリーンショットなどでその事実が明るみになれば(チクられれば)、不適切な情報開示として当局や企業、投資家から非難や警告を受けることもある。当然ながら要注意。
とは言え、便利なツールであることに変わりはない。昨年の上海ロックダウン。マンション住人のグルチャが自然発生的に立ち上がり、コロナ関連情報、PCR検査の時間、生活物資の共同購入のお知らせなどが飛び交った。
近所付き合いは何かと面倒だが、チャット上だとそのハードルは低くなる。協力心や団結感も俄然強まった。忌々しい出来事ばかりのなか、チャットが数少ない拠り所だったのも事実だ。
とはいえ、ゼロコロナ政策が終了した今、このグルチャが封鎖生活のサバイバルツールとして再び動き出すことはないだろう。たぶん......。
奥山 要一郎
東洋証券株式会社
上海駐在員事務所 所長
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