エジプトが「穀物貿易規約」から脱退したワケ
ロシアのウクライナ侵攻により、エジプトへの主食用小麦の輸入が不安定となってから1年以上が経過した今、首都カイロは、数十年間にわたり加入していた国際穀物理事会が運用する穀物貿易規約から、今年4日に正式に脱退した。
世界有数の小麦輸出国であるロシアとウクライナの戦争は、世界最大の小麦輸入国であるエジプトに住む1億人以上の人々の生活を危険にさらした。彼らの多くは、小麦を主食としている。
「この戦争が世界貿易に与えた影響は大きい。エジプトの貿易不均衡も悪化させている。経済の停滞が続く中、エジプトは外貨資源の不足に直面し、結果として穀物貿易規約からの脱退を決定した」と、供給省のアリ・アル=メセルヒー大臣は今年3月に発表した。
Mada Masrの取材に応じた小麦の製粉・輸入・供給に携わる関係者らと国連食糧農業機関の情報筋はいずれも、「この規約に加入するために必要なコストが、エジプトにとっての利益を上回る結果となったためだ」と、今回の脱退について指摘している。
この規約は、加入国間の商業的な国際自由貿易と情報共有を通じて、食料安全保障を促進することを目的としている。
エジプトにとって負担でしかない
しかし、ある穀物輸入業者と政府筋が匿名を条件にMada Masrの取材に答えたところによると、加入国の会費は高額で、しかも外貨で支払われていたという。結果、エジプト財務省からの経費削減の指示により、供給省は規約からの脱退を決定した。
さらに、同規約への加入は、名目上は加入国間の小麦供給を支援することを意図しているが、実際にはエジプトにとって負担でしかなく、現時点では名目上の利益を享受する見込みはないということだ。
エジプトのアハラーム政治・戦略研究センターのアリ・アルイドリシ副所長は、「主にロシアからの穀物輸入に頼っているエジプトは、ロシアと欧州連合(EU)および米国との対立や各国のロシアへの経済制裁の影響により、同規約から期待されたような十分な小麦供給が得られなかった」と述べた。
外務省の匿名の情報筋によると、エジプトは2月に国際穀物理事会へ規約からの脱退を通告し、6月末までに実施する意向を示した。当時、供給省と外務省が行った同規約への意見交換では、ロシアのウクライナ戦争により世界的に穀物価格が上昇していることから、エジプトの穀物貿易規約への加入は「付加価値をもたらさない」と結論付けられたとされる。
政府は小麦の輸入依存度を下げるため、国内での収穫量を増やす努力をしており、昨年には、慣例となっている7月末の収穫終了を8月末まで延長した。