雇用延長を希望するサラリーマンが増加中
厚生労働省『令和3年雇用動向調査』によると、2021年、定年退職者は33万0,400人で、そのうち正社員が30万5,100人。男性は21万6,600人、女性は8万8,500人となっている。
同じく厚生労働省の『令和4年就労条件総合調査』では、一律定年制を定めている企業は、全体の94.4%で、年齢は「60歳」が72.3%、「65歳」が21.1%、「66歳以上」が3.5%だった。
勤務延長制度や再雇用制度がある企業だが、一律定年制を定めている企業が94.2%で、再雇用制度のみを採用している企業が63.9%、勤務延長制度がある企業が10.5%、両制度併用している企業が19.8%だった。
老後不安からなのか、雇用延長を希望する人も増加している。現在、高年齢者雇用確保措置として65歳未満の定年制を定めている企業は、65歳までの安定した雇用を確保するため、①65歳までの定年の引上げ、②定年の定めの廃止、③65歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度等)の導入の、いずれかの措置をとることが義務付けられている。
また、2021年4月には「70歳までの就業確保」の努力義務がスタートするなど、希望する限り働ける「ありがたい環境」が、着々と整備されている。
とはいえ、サラリーマンにとって定年は人生における大きな区切りであることには変わりなく、退職金を受け取ってとりあえずひと息つこうという人もいる。
大企業 vs. 中小企業の退職金格差に衝撃も、さらなる悲劇が…
厚生労働省によると、退職給付制度がある企業は大企業(従業員1,000人以上)で92.3%、中小企業(従業員30~99人)で77.6%となっている。
企業規模により退職金制度の有無にも差がある格好だが、そもそもの金額自体の差が極めて大きい。
一般社団法人日本経済団体連合会『2021年9月度 退職金・年金に関する実態調査結果』によると、「大学卒・総合職・60歳定年」は2,440.1万円、「高卒・総合職・60歳定年」は2,120.9万円だ。中央労働委員会『令和3年賃金事情等総合調査』では、「大学卒・総合職・60歳定年」は2,563.9万円、「高卒・総合職・定年退職」は1,971.2万円。
調査で多少の差はあるが、大卒60歳定年なら、2,000万~2,500万円となるようだ。
では、中小企業の平均退職金額はどうか。
東京都産業労働局『中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)』によると、「大卒60歳定年」は1,091万8,000円。「高卒60歳定年」は983万2,000円。中小企業の退職金は大企業の半分以下となっている。
また、退職金額は年々減少している。10年前の調査では「大卒60歳定年」は1,224万4,000円、「高卒60歳定年」は1,136万3,000円となっており、ここ10年で10~15%も減少している。すでにご存じかもしれないが、退職金の減少傾向は、大企業も同様だ。
退職金減額の背景には日本経済の停滞、企業の業績悪化、成果主義の導入等があると思われるが、定年時の退職金額を想定し、地道に努めてきたサラリーマンにとって、この事態は納得しかねるものではないか。
もしさらなる退職金の減少となれば、「あれほど頑張ってきたのに…?」と、無力感にさいなまれるサラリーマンが続出するに違いない。
専門家のなかにも、退職金ありきで老後の資金計画を立てる危険性を指摘する人は多い。退職金以前に、自分が定年になるまで勤務先が存続しているかどうか、そちらを心配する必要があるかもしれない。
いまの40代、50代の人たちは「退職金、もしもらえたら、うれしいな」くらいに思っておき、それを計画に含めない人生設計を描いた方が無難だろう。そうすれば、落胆も怒りもなく、精神衛生上もいいのではないだろうか。
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