(※写真はイメージです/PIXTA)

※本稿は、チーフストラテジスト・石山仁氏(三井住友DSアセットマネジメント株式会社)による寄稿です。

過去最高を更新した22年度の株主還元

<株主還元総額は27.9兆円>

■株主還元とは配当や自社株買いを行い、事業によって獲得した利益を株主に還元することを指します。日本市場は総じて株主還元に消極的だと指摘されてきましたが、実際には配当も自社株買いも増加傾向を続けています。22年度の株主還元の実施総額は27.9兆円と2年連続で過去最高を更新しました。内訳をみると、配当金が18.2兆円、自社株買いが9.7兆円といずれも過去最高となりました。

 

■当期純利益からどれだけ配当金に振り向けたかを示す配当性向は35.8%でした。さらに、自社株買いを加えた株主還元性向は55.4%でした。1年前の時点で22年度の配当性向は34.0%、株主還元性向は50.0%と予想されていましたので、それを大幅に上回る結果となりました。

 

【図表】全上場企業の株主還元

 

<23、24年度も増額が期待される>

■続く23、24年度も株主還元総額は増加すると期待されます。配当性向は35%台で安定して推移する見通しですが、自社株買いの増加から株主還元性向は59%台まで拡大すると期待されます。ちなみに、23年4-6月の自社株買い設定枠は4.2兆円と昨年4-6月の4.4兆円に次ぐ規模となっています。

企業価値の向上とエンゲージメントの強化につながると期待

■今後も株主還元は増加する見通しですが、投資家や企業は株主還元についてどのように考えているのでしょうか。

 

<個人投資家の期待は高まる傾向>

■個人の配当に対する期待は高まる傾向にあります。

 

■日本証券業協会によれば、個人が重視する方針は「概ね長期保有だが、ある程度値上がり益があれば売却する」が全体の50.5%と過半数を占め、次いで「配当・分配金・利子を重視している」が21.0%でした(2022年10月19日付、日本証券業協会「個人投資家の証券投資に関する意識調査」)。

 

■配当重視の比率は20年度調査が19.0%、21年度調査が19.5%、22年度調査が21.0%と過去3年間じりじりと上昇傾向にあります。

 

<企業と機関投資家の間では高い水準で一致はしているが…>

■企業と機関投資家の間では、株主還元・配当政策に関する説明に対して、「一定程度行っている」との回答が企業は56.8%、投資家が62.4%と大半を占めていることから両者の認識は高い水準で一致していると思われます。ただ、企業で37.8%と2番目に多い「十分行っている」の回答に対して投資家は1.1%と非常に大きな認識ギャップがあり、エンゲージメント(対話)が不足していると思われます(生命保険協会「企業価値向上に向けた取り組みに関するアンケート集計結果(2022年度版)」)。

 

<東証の要請から浮かび上がるバランスシートの質的変化と重要性を増すエンゲージメント>

■今年3月に東京証券取引所が公表した「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」で、株主還元は「バランスシートを質的に変化させることができる有効な手段と考えられる場合もある」としています。バランスシートの改善を通じ、資本収益性に対する意識が高まれば、企業価値の向上にもつながると期待されます。

 

■ただ、株主還元に基づく企業価値の質的な向上は時間がかかる取り組みです。企業と機関投資家の間にある株主還元・配当政策に対する説明が「十分ではない」との認識ギャップも、埋まるのには時間がかかると思われます。だからこそエンゲージメントの重要性は一段と増すと考えられます。

 

■23、24年度の株主還元の増加が、企業価値の向上とエンゲージメントの強化につながると期待されます。

 

 

(2023年7月10日)

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『【日本の株式市場】22年度の株主還元総額は「過去最高」を更新 23、24年度も「増額」が期待される(ストラテジストが解説)』を参照)。

 

石山 仁

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフストラテジスト

 

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