アインシュタイン「この世でいちばん難解なのは所得税だ」
税務政策は複雑に込みいっていて、量が膨大で、しかも退屈きわまりない。あのアルバート・アインシュタインも、彼の税金を計算していた会計士に向かって言っている。
「この世でいちばん難解なのは所得税だ」。
理解できる人はほとんどおらず、理解できる少数の人はだいたい会計士か銀行員、あるいは多国籍企業や裕福な人の弁護士になっている。
だが、20世紀の政策で21世紀の問題を解こうとするとき、税金はあちこちの扉を開けられる万能キーとなる。
毎年何兆ドルもの税金が徴収から漏れたり、行方不明になったりするうえ、なかには税金を払いたくない外部の勢力に丸ごと取りこまれてしまった国もある。
こうした税金のシステムを修正すれば、この本を読んでいる人の99%は払う税金をもっと少なくでき、政府が使える予算はもっと増えるはずだ。税制は、各国の政府が分断され苦しめられている世界的な課題の縮図なのだ。
グッチのベルトと「40ユーロ」のベルトは何が違う?
税制の複雑さと問題の大きさは、ベルトを買いかえるという単純な行為からも見てとれる。
イタリア人のマルコは、スーパーマーケットで知りあったライターのジュリアと夕食に出かけた。カルボナーラ・スパゲティを食べながら話が弾み、デザートにティラミスも楽しんで、完璧なデートだった。
だがデザートの時点で腹回りが苦しいと感じていたマルコが伝票をつかもうと身を乗りだしたら、ベルトのバックルが外れて床に転がりおちてしまった。
なんとか冷静さを保ち、オーバーコートを着て、ジュリアの腕をとり、せっかくの初デートを台無しにしないうちに彼女の家まで歩いて送りとどけた。二回目のデートのまえに、身体に合った新しいベルトを調達しなくては。
ローマの中心あたりにあるアパートに戻ったマルコは、ノートパソコンを開き、グーグルに「メンズ イタリア製 革ベルト」と入力した。
イタリア半島の人たちは何千年もまえから革を扱っており、グッチなどのブランドでもわかるとおり、彼らの職人技は世界トップクラスにある。
ノートパソコンの画面には、自然(オーガニック)検索(スポンサーの広告に左右されない検索)の結果よりも上に広告が次々に表示された。いちばん上にあったのはグッチの広告だった。
だがマルコはブランド品には興味がなかったし、360ユーロの値段は予算オーバーだ。
ひとつ下の欄を見ると、「フィレンツェの革職人 アスカーニ家」の広告があった。アスカーニ家はグッチと同様、創業100年の歴史をもち、フィレンツェで高級イタリアンレザー製品をつくっている。
グッチとちがうのは、彼らのベルトの値段は40ユーロしかしないことだ。
マルコは、画面に映しだされたベルトを気に入った。色は黒、ツヤがあり、機能面もよさそうだ。本物のイタリアンレザーでこの値段は破格と言っていい。広告をクリックしてアスカーニ家のウェブサイトへ飛び、オンラインで購入した。
ベルトは2回目のデートに間にあい、3回目、4回目、それ以降も何度も活躍することになる。