今週の注目点…引き続き株価とクロス円に注目
それにしても、なぜ先週株価下落が広がるところとなったのか。きっかけは、すでに見てきたように、7月FOMCでの利上げ再開の可能性が高まるなかで米金利の上昇が広がったことから、それを嫌気したということでしょう。
そもそも、日経平均で見ても5~6月と大幅高となったことで、さすがに短期的には「上がり過ぎ」懸念が強くなっていました(図表5参照)。
こういったなかで、米金利上昇の拡大は、「上がり過ぎ」修正の格好のきっかけになった可能性がありました。では、株高はすでに終わり、株安が一段と拡大に向かうかと言えば、それは違うのではないでしょうか。
日経平均の5年MA(移動平均線)かい離率を見ると、日本株バブルと呼ばれた1989年代後半や、信用バブルと呼ばれた2007年にかけて、またはアベノミクスの株高ピークとなった2015年前後は、同かい離率は40%を大きく上回る拡大となりましたが、それらに比べると今回はまだ「バブル」というほどではなさそうです(図表6参照)。
以上のように見ると、株価は短期的な「上がり過ぎ」修正が一段落した後は、上昇が再開する可能性があるのではないでしょうか。
今週は、12日の米CPI(消費者物価指数)発表を皮切りに、週後半は注目の米インフレ指標発表が続く予定となっています。
金利市場では、すでに先週までの段階で、7月FOMCでの0.25%の利上げをほぼ織り込んだ形となっていますので、これらインフレ指標の結果も影響は限られる可能性はありそうです。
ただし、まだ短期的な「上がり過ぎ」修正の途上にあると見られる株価だけに、インフレ指標の結果を受けてさらにリスクオフ拡大となるかは、引き続き予断を許せないでしょう。
クロス円…「対メキシコペソ」でみる円の動き
5~6月に世界的に株高が広がるなかで、為替相場では米ドル/円以上にクロス円の上昇が目立ちました。これは、リスクオンにおいては円と米ドルが「キャリー通貨」として売られやすく、円と米ドルの同時安となる結果、円に対して米ドル以外の外貨が大きく上昇するためです。
こういったなかで、一部のクロス円にはメキシコペソ/円などさすがに「上がり過ぎ」懸念が目立ってきました(図表7参照)。こういった通貨ペアは、リスクオフなどをきっかけに「上がり過ぎ」の反動が広がるリスクに要注意でしょう。
また、メキシコペソ/円は5年MAかい離率を見ると、中長期的にも「上がり過ぎ」懸念が極めて強い状況が続いていると見られています。
そのため、短期的な「上がり過ぎ」の修正で始まった下落により、後から振り返ったらそれは上昇トレンドが終わり、下落トレンドの始まりだったとなる可能性もあります(図表8参照)。
先週金曜日の米ドル安・円高を受けて、テクニカルにはさらに米ドル下値を模索しやすい状況となりました。一方で、先週株価が大きく下落した反動で、株高に戻す可能性もあるでしょう。
米ドル/円はそんな株価の動向などをにらみながら、140~145円中心で上下に振れやすい展開を予想したいと思います。
吉田 恒
マネックス証券
チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長
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