パリ・エアショー vs ファーンボロー国際航空ショーの発表動向
2023年のパリ・エアショーにおける1,213機の旅客機ナローボディおよびワイドボディ民間航空機受注は、2019年のパリ・エアショーの合計627機の受注数と比較し、ほぼ倍に増加した。市場規模別に見ると、ワイドボディ機の受注が51機(2019年)から132機(2023年)に急増した。その結果、2023年の市場評価受注額は770億米ドル(約11兆1,373億5,700万円)となり、これは2019年の受注額を125%以上上回る数字である。
2023年の受注台数は、パリと隔年で開催される2022年のファーンボロー国際航空ショー※で発表された313機の4倍近くとなった。昨年のファーンボロー国際航空ショーではワイドボディ機の受注が発表されなかったため、市場評価額はパリ・エアショー2023の合計の5分の1にとどまった。
※イングランド南部のハンプシャー州にある、ファーンボロー空港で偶数年の7月に開催される航空ショー
2023年の受注総額は、明らかに同じ国の2つの航空会社の機材更新と成長計画に牽引されている。エア・インディアとインディゴ航空だ。両社を合わせると、2023年の受注発表全体の約86%を占めた。
これと比較して、ファーンボロー国際航空ショー2022では、2つの最大の受注が2022年の総計の60%を占めており、その中にはグローバルなリース会社1社が含まれていた。パリ・エアショー2019では、2つの最大の受注が全体の58%を占め、同様にグローバルな貸主1社が含まれていた。地理的な集中は、デリバリーの資金調達に際して重要なリスク考慮事項であり、その詳細は以下の通りである。
2019年、パリで最終決定された受注は、その年の総受注2,266件の28%を占めた。2022年の受注総額は2,905件で、このうちファーンボローで発表された割合は比較的少ない。
結論
パリ・エアショー2023は、航空機メーカーとそのサプライチェーンにとって、受注面では商業的な成功を収めた。しかしながら、現在は、これらの受注を需要に見合った納入に転換しなければならないというプレッシャーがかかっている。
旅行需要を減退させかねない景気の逆風や、サプライチェーンの制約、一部エンジンの信頼性問題によってもたらされた大きな公然の課題に対して、受注増加のペースが続くかどうかはまだ不明である。
また、資金調達コストは過去12ヵ月で急速に上昇している。このような状況がいつまで続くのか、そして新たに発注された航空機の引き渡し時期が到来したときに、どのような資金調達環境が普及しているのかは、まだ明らかではない。
さらに、これらの航空機の引き渡しは、86%が単一の地域に拠点を置く航空会社から直接発注されるという地理的な集中もあり、先のパリとファーンボローの両ショーよりも大幅に高い。航空機に融資する投資家はこの点を考慮することになる。
著者: Gary Crichlow – Head of commercial ISTAT appraiser