中古建物は価値を高めてから売る
たとえば、木造の建物は「雨漏り」と「シロアリ被害」がなければ70~80年はもちます。そして、中古物件を求めている人も確実にいます。
とはいえ、不動産業界では「中古の建物=価値がない」と決め付ける傾向が強いのも事実です。また、建物の評価額は築年数とともに下がっていきます。ちなみに、築40年の私の実家は、固定資産税通知書による建物の評価額はたったの66万円でした。
それだけに、買う側にとっては「中古物件=価値はない」という先入観が強く働いています。さらに中古物件は、目には見えない問題箇所も多く、不安要素は尽きないため、価格が高いと躊躇してしまう側面もあります。
だからといって、「実家の建物の価値はゼロ」と諦めてはいけません。
中古物件に抱く買い主の不安を取り除いてあげれば、高い値段で売れる可能性は高まります。
私の実家は、私の維持の仕方に難があったため、とても住めた状態ではありませんでしたが、空き家になった当初は、母が玄関先やトイレのリフォームをしていたこともあり、とてもきれいな状態でした。
しっかりと維持していれば、そこで暮らしたいと考える人もいたのではないかと、今は思います。
もし、親から引き継いだ実家をチェックし「建物はしっかりしている」と判断するのであれば、建物に価値を求めても良いかと思います。せっかく親が大切にしてきた家なのですから。
◆建物の価値を証明する
ただし、写真を撮って「きれいです!」とアピールするだけでは、買い主の不安を取り除くことはできません。建物は表面上はきれいに見えても、中身は、シロアリに食われていたりするケースも多いからです。
では、買い手の不安を払拭するには、どうしたらいいのでしょうか。建物の価値が高いことを証明すればいいのです。具体的には「インスペクション」「瑕疵(かし)保険」「住宅履歴情報」を実践します。家の価値が高いことを証明するには、具体的な証拠が必要になります。これの3つの仕組みを可能な限り活用しましょう。
1. インスペクション
住宅に精通した専門家であるインスペクター(検査士=主に建築士)による建物の健康診断のこと。第三者の目によって、建物の欠陥の有無、劣化状態、リフォームの必要性などをチェックします。
欧米では常識になっているサービスで、日本でも徐々に浸透してきています。
インスペクションは、対応している設計事務所などに申し込みます。そして、依頼者立ち会いのもとで検査を行います。
たとえば、一戸建てであれば「基礎に鉄筋は配してあるか」「シロアリ被害はないか」「基礎工事の内容は」などをチェックしていきます。
インスペクションの結果、重大な欠陥が明らかになった場合は、リフォームをするのも一つの選択肢ですが、親の家であれば、「それならば、建物に価値を求めない」と判断するのもいいでしょう。
数百万円かけてリフォームして販売するのは、リスクが高いからです。
【インスペクションの詳細】
・申し込み先:インスペクターのいる設計事務所に申し込みます。NPO法人「ホームインスペクターズ協会」のホームページから、インスペクターを検索できます。
・実施方法:検査日時を決め、依頼者立ち合いのもとで検査を実施。屋根、外壁、室内など、建物のあらゆる部分の現状を目視で診断。所要時間は30坪程度で2~3時間。
・チェック箇所:床下を目視し「基礎工事はベタ基礎か布基礎か」「基礎に鉄筋は拝してあるか」「木部の腐食はないか」等。
・費用:目視の診断は5~10万円前後。