(※写真はイメージです/PIXTA)

子弟を海外の現地校やインターナショナルスクールに学ばせたものの、いずれは帰国しなければならない――。日本で中学・高校・大学受験をするにあたり、帰国生のメリットを最大化するには、どうしたらいいのでしょうか。本記事では、海外でインターナショナルスクールスクールに通う子どもたちの英語力と日本語の学習状況について、海外在住の日本人向け学習塾の先生にお話を聞きました。※本記事は、OWL Investmentsのマネージング・ディレクターの小峰孝史弁護士が監修、OWL Investmentsが執筆・編集したものです。

海外でインターナショナルスクールや現地校に通学しているが、いずれ帰国しなければならない。帰国生として中学受験等を行う場合、不利になることはないのだろうか…。実情がわからずに悩む親御さんは多くいらっしゃいます。

 

かつて香港に暮らし、2人の子どもを進学塾「epis Education Centre」(以下、EPIS)に通わせていたOWL Investmentsの代表(小峰孝史)が、お世話になったEPISの仲田敬之先生に、海外で学ぶ日本人の子どもたちのバイリンガル教育についてお話を聞きました。

海外と日本…両方の場所で教育を受けるメリットとは?

小峰:香港の進学塾の講師として多くの生徒を教えてきた仲田先生からみて、帰国生として中学受験をするメリットはどこにあるとお考えですか?

 

仲田:小学校時代に海外を経験して、その後の中高6年間という精神的に大きく成長する多感な時期に日本人としてのアイデンティティを形成できるというのは大きいと考えています。これは、日本・海外のちょうどいいバランスを作れるのではないかと思います。

 

小峰:では、そのような教育課程を経た子たちにとって、日本の大学と海外の大学、どちらに進学するのがお勧めですか?

 

仲田:どちらがいいか一概には決められないでしょうね。本人が考えて選択すればいいと思います。

あまり知られていないが、帰国生としての高校受験は非常に有利

小峰:では、中学生まで海外で生活し、帰国生として高校受験をする場合について教えてください。

 

仲田:率直なお話、帰国生が高校受験をするのはアドバンテージがあります。多くの塾は、中学受験しか見ていない、高校受験しか見ていないなか、私達EPISは中学受験も高校受験も両方とも見ているからこそ気づくのですが、同じ学校でも、中学や大学から入るより、高校からのほうが入りやすい場合が多いのです。

 

小峰:具体的な例をご紹介いただけますか?

 

仲田:たとえば、中学受験の最高峰といえる開成中学校を見てみましょう。中学受験の偏差値と高校受験の偏差値を、数字だけで比較することはできないのですが、感覚的にいって、開成中学より開成高校の方が、数段合格しやすいです。もちろん、高校受験においても最難関校であるので、易しいという意味ではありませんし、合格に至るまでは相当な努力も必要になります。

 

小峰:高校受験のほうが合格しやすというのは、考えたことがありませんでした。大学受験と比較しても、高校受験はお得でしょうか?

 

仲田:はい。大学から入るよりも高校から入る方が入りやすいケースは多いです。たとえば、私立大学のトップ2である早慶をみても、早慶の付属に中学受験で入るのは難関、大学で入るのも難関ですが、高校受験で入るのは比較的とはいえ、入りやすいといえます。また、早慶の付属校には手が届かない子であっても、GMARCH(学習院、明治、青山、立教、中央、法政)の付属校もあります。これらGMARCHの付属校も、GMARCHに大学受験で入るより、ずっと入りやすいのです。

 

小峰:中学受験や大学受験と比べて、高校受験が受かりやすいのはなぜでしょうか?

 

仲田:第一に、優秀な子たちが中学受験で抜けてしまっているということがあるでしょう。第二に、中学受験と比べた場合、中学受験では英語が受験科目にないのに対し、高校受験では受験科目に入っていること、そして、帰国生は英語でかなり大きな差を付けられるということがあるでしょう。そしてもう1点、数学と英語において、中学3年間で学習する範囲は、中学受験や大学受験で求められる範囲とくらべて非常に狭いため、難度を上げにくいという、構造的な背景もあります。

 

小峰:なるほど。

 

仲田:こうした理由から、帰国生として高校受験をする場合、難関校も含めて受験しやすくなるのです。

進路の選択肢が広がる、帰国生の大学進学

小峰:最後に、高校生まで海外で勉強してきた子の場合について伺いたいと思います。日本人であっても、インターナショナルスクールで勉強したなら、英語圏の大学に入学できるのでしょうか?

 

仲田:香港にもインターナショナルスクールは様々あって、極端にいえば英語力を問わないインターナショナルスクールから、試験で入学者をかなり絞ってくるインターナショナルスクールまであります。そして、入学者をかなり絞ってくるインターナショナルスクールを卒業する日本人生徒を見ていると、大学の世界ランキングでトップ50に入るような英語圏の有名大学に入る子も少なくありません。

 

小峰:優秀な子が集まるスクールには、そのような状況があるのですね。

 

仲田:ただ、「極端に言えば英語力を問わないインターナショナルスクール」でも、生徒ごとに進路はかなり違っています。上位層の生徒であれば、英語圏の有名大学に進学しています。

 

小峰:一方で、日本の大学に進学する子もいると思いますが、そうした子たちはどういう大学に進んでいるのでしょうか?

 

仲田:日本の大学にも帰国生入試がある大学はかなり多いです。国立大学の上位校である、東大・京大・一橋にも帰国生入試があり、これらに合格した生徒も見てきました。これらの大学は、帰国生入試だからといって難易度が下がるという感じはありません。かなりハイレベルの生徒でないと合格はできない印象です。

 

小峰:私立大学ではどうでしょうか?

 

仲田:私立文系の場合、一部学部を除いて数学が入試科目になく、英語の比重が高いです。そのため、帰国生入試に限らず、高校まで海外のインターナショナルスクールに通っていた生徒であれば、かなり楽々と合格している印象です。大学名を挙げれば、早慶のレベルでもかなり合格できています。

 

小峰:先生が見ていらっしゃる生徒さんたちは、もともと学力が高いお子さんが多いように思いますが、それほどでもないお子さんの場合はどうでしょう。率直な話、普通に日本で学んでいたら有名大学に入れなかっただろうけれども、海外のインターナショナルスクールで学んだからこそ、ワンランク上の大学に入れた…といったケースはありますか?

 

仲田:さきほど、海外のインターナショナルスクールで「二極分化」すると申し上げましたが、この「二極分化」の下の方の子たちの場合、TOEFLで60点程度しか取れない場合があります。しかし、こうした子たちも、日東駒専(日本大学・東洋大学・駒沢大学・専修大学)レベルの大学に合格できています。

 

小峰:日本で普通に高校に通っていたら、日東駒専に合格していなかった子たちが、海外のインターナショナルスクールで学んだからこそ、日東駒専に合格したということですか?

 

仲田:そうです。その意味では、海外に来たことで下剋上を果たせたともいえそうです。ただ、あまり簡単だと思ってほしくはありません。こうした子の場合、インターナショナルスクールで進級できず、途中で留年しているような例も少なくないのです。ですから、あまり安易に考えてないでいただけたらと思います。海外のインターナショナルスクールで英語力をつけたことで、ワンランク上の大学に進学できることも多い、ということです。

 

小峰:安易に考えてはならないものの、ワンランク上の進学をできるチャンスにもつながる、ということですね。非常に興味深いお話をありがとうございます。

 

(敬称略)

 

epis Education Centre

香港(香港島、ホンハム)、中国(深セン、蘇州)、オーストラリア(シドニー、メルボルン、ブリズベン)、インド(グルガオン)に教室がある、進学塾。小学生の中学受験、中学生の高校受験、高校生の大学受験を幅広くカバーしている。

 

 

仲田 敬之 先生 プロフィール

2010年よりepis Education Centre香港教室(Causeway Bay)。九龍教室(現ホンハム教室)責任者を経て、2015年中国・蘇州教室開校のために赴任。2017年より香港教室責任者として香港地区2教室の統括に携わる。

指導教科は、英語を中心に文系科目。中学入試、高校入試、大学入試において、帰国生入試から難関校一般入試の受験指導、英語については学習初心者からインター・現地校生の指導まで幅広く携わる。

 

 

小峰 孝史
OWL Investments
マネージングディレクター・弁護士

 

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