(※写真はイメージです/PIXTA)

ここ数カ月、世界のM&A状況は低迷しており、北米、EMEA(ヨーロッパ・中東・アフリカ)、APACの2023年第1四半期は、2022年度第4四半期を下回っている状況です。現状の分析ととも、今後の展望を見ていきます。※本記事は、Datasite日本責任者・清水洋一郎氏の書き下ろしです。

M&A金額、好調だったAPACも前四半期比で10%減へ

この数カ月間のM&Aは、世界的にみても悲観的な状況であります。Mergermarketと連携し、Datasiteが発表した「Deal Driversレポート」の調査結果によると、2023年第1四半期、APACにおけるM&A金額は北米やEMEAよりも好調でした。取引件数においては、北米の28%減、EMEAの34%減ほどではないですが、APACでも同様に、前四半期比で10%ほど減少しています。

 

2022年のほとんどの期間、M&Aを妨害していた問題と同じ世界的な問題が、今もディールメーキングに影響を与えています。第1四半期における世界の地域別活動内容の詳細は下記の通りです。

APAC:東南アジアの新興市場にも、魅力的な案件が誕生

2023年第1四半期にAPAC全体で発表されたM&Aの取引件数は2,196件で、前四半期から15%減少しました。APACにおけるディールメーキングは2022年から始まり、今も減少傾向が続き、合計2,196件という取引件数は、前年同期比で25%減少しています。

 

地域的には、最大の経済大国である中国で、第1四半期には苦戦が続き、中国のM&A市場はAPACの数値に大きな影響を与えています。しかし、その他のAPAC市場では、APACの主要産業におけるM&Aの将来を示唆するような大型案件がいくつか発生しました。

 

デジタル・トランスフォーメーションや代替エネルギー、貴金属、モビリティ・ソリューションまで、この地域のディールメーカーは、特にAPACの先進国や通信、金融サービス、産業、インフラなどのセクターにおいて、今後のM&Aを特徴づけることになるであろう主要なイノベーション・トレンドに注目し出資しています。また、インドやその他の東南アジアの新興市場でも、魅力的な案件が生まれ続けています。

 

多様で成長意欲のあるAPACの経済圏は、ともに2022年の不運から立ち直る準備が整ったように見えます。

北米:景気回復傾向、PEは約200億ドルの待機資金投入検討か

数カ月の低迷期を経て、北米では回復の兆しが見られています。米国西部や南部など一部地域のM&A市場は低迷を回避し、取引件数と総額は増加、わずかな大型取引も完了しました。政策面でも、改善の兆しが見られ、米国における3月のインフレ率は前年同月比5%に低下し、2月の6%から大きく減速し、米連邦準備制度理事会(FRB)の中央銀行家たちは安心することを拒否していますが、今年の年末に利下げを開始する前に、あと1回だけ利上げが行われるとの見方が強いです。

 

資金調達の状況は当面厳しいと思われますが、資金力のある企業は、特にテクノロジー分野における評価の低下を利用することができるでしょう。特にプライベート・エクイティ(PE)会社は、景気後退期こそが最高の投資時期であることを理解し、約200億米ドルのドライパウダーの投入を検討しているようです。第1四半期に北米で発表された大型案件の中には、いくつかの買収案件が含まれており、年間を通じこのような案件は人気が続くことが予想されます。

 

米国のGDP成長率は、短期的にも中期的にも、依然として懸念される分野です。IMFが発表した最新の数字によると、米国のGDP成長率は2023年に1.6%、2024年には1.1%に低下すると予想されています。ラテンアメリカ&カリブ海諸国は、GDP成長率が昨年の4%から1.6%に低下した後、2024年には2.2%に再び上昇すると予想されており、やや良好な結果が得られると考えられています。

EMEA:高額取引はわずかも、中東・アフリカは成長の兆し

欧州の経済見通しは、大きな不安の時期から徐々にではありますが、回復し始めています。欧州では積極的な金融引き締め政策が行われたため、ほとんどの国でインフレ率が低下傾向にあります。中央銀行は、第3四半期後半に金利を引き下げる前に、1、2回利上げを実施するかもしれません。

 

経済見通しは脆弱な状況ですが、末期的ではありません。欧州の主要国のうち、イギリスとドイツのみ今年GDPが縮小する見通しの一方で、アフリカと中東の国々はユーロ圏の平均をはるかに上回る成長を遂げると予想されます。

 

厳しい資金調達状況やその他の逆風にもかかわらず、EMEAでは今後数カ月間、テクノロジー・メディア・通信(TMT)セクターがM&Aの大半を生み出すと予想されています。テクノロジー業界のディールメーキングはここ数四半期で激減しましたが、多くの市場にとって、最大、あるいは少なくとも最大級のM&Aボリュームドライバーであることに変わりありません。

 

大規模なディールは市場から姿を消し、EMEAでは第1四半期に50億ユーロを超える案件が1件、20億ユーロを超える案件が6件発表されたのみです。状況悪化の兆しを見せた昨年の同時期には、EMEAの10件の大型案件は合計で737億ユーロに達しましたが、今年はわずか291億ユーロに過ぎません。

 

 

清水 洋一郎
Datasite 日本責任者

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