(※写真はイメージです/PIXTA)

税務調査が来るとなると、「えっ、なぜ当社に?」と誰もが身構えてしまうものです。正しく申告していれば怖がる必要はありませんが、税務調査官の何気ない言動の裏には、納税者には思いも寄らない意図が隠れていることもしばしば。対応方法を間違えれば「不正があるのでは?」と疑いを招くことにもなりかねません。元国税職員・大倉佳子税理士が、税務調査の適切な対応方法を解説します。

税務調査はいつ来てもおかしくない

一般的にいわれる「税務調査」は、任意調査が80%で、事前通知がされます。正しく申告していれば、「税務調査」という言葉を怖がる必要はありません。それでも身構え、緊張するもの。調査当日までにできることを行うことで、調査当日の回答の仕方によって気持ちも結果も変わってきます。

 

令和3年度の法人にかかる調査割合は3.3%、過去5年で18%程度ですので、必ず5年に1回は調査にくるといったことはありません。税務署も疑義がある法人に対して調査対象として選定してきます。ただし、新規設立5年目までの法人に対しての調査割合は1ポイント程度上昇するのでは?と思います。

 

そして、数年前までは、税務調査は9月から11月がメインとなっていましたが、現状は6月にも税務調査の連絡が来て7月、8月の税務調査スケジュールを組んできていますから、税務調査期間は通年化しています。

税務調査前の対応 ~税務調査の日程は調整できる

税務署側は一応、税務調査の日程を伝えてきますが、あくまで希望日として聞き、ひとまず日程は保留します。日程は、調査を受ける側である個人事業主や法人側の都合に合わせられますので、たとえば2週間先となっても大丈夫です。事業の繁忙等を把握したうえで、自分側の日程をきちんと伝えましょう。

 

そして、税務署担当者から事前通知とともに伝えられる「準備してほしいもの」を揃えます。一般的には、総勘定元帳や事業用の通帳、売上・仕入・経費などの請求書や領収証などの書類です。

税務調査当日の対応 ~「不用意な返答・対応」はNG

税務調査とは、調査官が言うには「申告した内容の確認です。」が、

 

①聞かれたことに対して簡潔に答えること。

②予想外の指摘等を受けた場合でも、挑戦的な発言や態度はとらないこと。

③同じ質問が繰り返されても、たとえば、その都度「集計が誤っていました」と返すなど、一貫した発言をすること。

 

これらが重要です。不用意な発言は、不正したつもりがなくても「不正があったのでは?」と印象づけることになりかねません。

 

■税務調査官は『何気ない言動』で“探り”を入れている

調査官が『トイレを貸してください』と言うのは昨今ではあまり聞きませんが、この発言には、トイレの内外等に掲げられているカレンダーをチェックして、そのカレンダーの配布元である銀行や企業名から取引先を把握する意図があります。

 

提示された書類等にはない銀行や企業名が目に入ったら、調査官は、隠蔽しているものがあるのではないかと考えるとともに、調査が楽しくなる瞬間を提供しているのです。隠蔽を認定されると、修正等によって納付すべき税額にかかる加算税が、最も重いペナルティーである重加算税35%(無申告時40%)となります。

 

■『いい立地にお住まいですね』『お子さまはどちらの学校へ?』

他にも、『こちらのお住まいはいい立地ですね』というのは、購入価格やそれに伴う借入金、借入金の返済から申告している金額で賄えるかを試算するためです。

 

『お子さまの学校はどちらに?』といった家族構成に関する質問も同じです。私立に通学している、大学が遠隔地のため仕送りをしているといった回答から、申告額と実際の生活費を試算します。所得金額(利益として申告した金額)が200万円なのに生活費が月額50万となると、不足している400万円はどこから出ているのか? 申告額は過少なのではないかと考えるわけです。

 

■『普段の移動手段は?』

また、『社長、お出かけになるときはいつも何で移動されるのですか?』といった質問は、行動と支出の面からチェックするものです。回答では「車を利用している」というのに、経費にSuicaやPASMOのチャージ金額が計上されていると不自然な印象を受けます。SuicaやPASMOは物品の購入もできるので、二重に経費計上されていたり、コンビニでの使用が多く含まれていたりすることから、チャージ金額について経費否認となった事例を最近よく耳にします。

 

だからといって嘘をいうことはアウトです。真摯に回答しましょう。できるならば税理士を活用して事前に「こう聞かれるかも」を想定し、どう回答するのがBetterなのかを打ち合せることで少しでも不安を払拭して当日に臨みたいものです。

 

 

大倉 佳子

大倉佳子税理士事務所 代表、税理士

元国税職員としての経験を活かし、確定申告から相続相談、創業支援などを行う。難解で漢字だらけの税務用語をわかりやすく説明し、身近なものとして理解してもらえるような税理士事務所であることを心掛けている。

 

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