画像:PIXTA

「所有者不明土地」は、隣接土地への悪影響や土地開発事業の阻害など多くの観点から問題視されています。本連載は、司法書士法人みどり法務事務所が運営するコラム『スマそう−相続登記−』から一部編集してお届け。本稿では、「土地の相続登記をしないことで発生する問題」や「土地を相続したくないときの選択肢」について解説します。

●相続放棄する

相続放棄をすれば相続権を失うため、土地を相続する必要はなくなります。

 

ただし、相続放棄は、相続財産すべての相続権を失うことになるため、土地以外には価値のある財産が存在する場合でも、土地だけ相続放棄をすることはできません。そのため、相続放棄をする場合は、土地のマイナス価値とほかの財産のプラスの価値を比較して慎重に検討してください。

 

なお、相続放棄をしても、他の相続人が土地を管理できるようになるまで、その土地を管理する義務は残るため、相続放棄をしたら終わりではなく、ほかの相続人とも相続財産の管理について話し合う必要があります。

 

特に、相続放棄により相続人がいなくなった場合は、裁判所に相続財産管理人の選任を申立て、相続財産を管理してもらうことになります。

 

その場合、申立て費用に加え、相続財産を管理するために必要な費用、相続財産管理人の報酬を納付することになります。

 

※相続放棄は、原則として相続があったことを知ってから3ヵ月以内に家庭裁判所に申請する必要があります。

●相続後に売却する

相続したあとに土地を売却できれば、土地を管理する負担は免れます。

 

仲介業者に土地の買主を探してもらう方法(仲介)、不動産会社に土地を直接か買取してもらう方法があります(買取)。

 

●相続後に寄付または譲渡する

自治体に寄付、または個人に譲渡するという方法もあります。

 

ただし寄付により、自治体は土地からの固定資産税を失うことになるため、寄付を受け付けてもらえる可能性は高くありません。

 

個人に譲渡する場合は相手先を探す必要がありますが、可能性があるのは、その土地の隣地所有者でしょう。土地を合わせることにより価値が出るケースがあるためです。

 

●相続土地国庫帰属制度を利用する

令和5(2023)年4月27日以降であれば、相続土地国庫帰属制度を利用する方法もあります。

 

相続土地国庫帰属制度とは、相続した土地の所有権を手放して、その権利を国に帰属させる制度です。

 

この制度を利用するためにはいくつかの条件があり、以下の一つにでも当てはまる場合は申請が却下されます。

 

・建物がある

・担保権や使用収益権が設定されている

・他人の利用が予定されている

・特定の有害物質によって土壌汚染されている

・境界が明らかでない土地・所有権の存否や範囲について争いがある

 

なお、この制度の承認を受けた場合、土地の管理費用10年分相当の負担金を納付する必要があります。

まとめ

以上が、所有者不明土地に関する問題点や対処法です。

 

相続放棄を放置すると罰則が科せられることになります。また、土地の管理不足により近隣住人被害が及んだ場合、管理責任を問われ損害賠償を請求させるケースもあります。

 

土地の相続について、土地を相続したあとの処分についてお悩みの方は、一度司法書士になどの専門家にご相談ください。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧