(※写真はイメージです/PIXTA)

「老後破産」と聞くと、年金額も貯蓄も少ない高齢者をイメージするかもしれません。しかし、たとえ一般的な額よりも多く年金を受け取っていても、貯蓄が十分にあっても、老後破産に陥ることはあるとCFPの伊藤貴徳氏はいいます。一体なぜなのでしょうか?  65歳のAさんの事例とともに老後のマネープランについて解説します。

「年金350万円」でも足りない…Aさんの収支状況

前述のとおり、Aさんは都内の一等地のマンションに住んでおり、月額50万円の家賃を支払っています。交友関係も広いため、毎月の付き合いに伴う出費は絶えません。退職後から年金受給までの5年間は、退職金やこれまでの貯蓄を取り崩しながら生活していました。

 

65歳から年金を受け取ることができるということにも少し期待しながら、細かいことは気にせず暮らしていましたが、いざ年金を受け取れる年齢となり、改めて将来のことを考えたところ、今回の事態に気付かされます。現役時代に高収入だったとしても、今後の支出が多い状態が続くと破産する可能性はあります。

 

現役世代と同様の生活を続けることを望む場合、セカンドライフの収入でも実現可能なのか、よく見極める必要があります。一般的にセカンドライフを迎えたときは収入がダウンするということと、どのくらいダウンするかをしっかり把握しておきましょう。

 

支出面についても注意が必要です。特に、生活水準を下げることはとても大変です。Aさんのケースの場合、たとえば固定費の削減として大きな影響をもたらす家賃などの居住費を減らすため、現在よりもっと安い家賃のマンションへ引っ越すことも選択肢のひとつです。

 

いくら飽き性とはいえ、今後さらに年齢を重ねてからも住み慣れていない住居へ定期的に引っ越し続けることはあまり現実的ではありません。予算の範囲内で不動産を購入したりすることで今後の支出を抑えることも選択肢のひとつでしょう。

 

支出のバランスを整えることで生活を担保することも大切ですが、自分たちらしく生きるための生活の質を維持するにはどうすればよいのかを考えることも、とても大切です。優先順位を家族で話し合いながら、それぞれの選択肢への理解を得ることで徐々に解決へと進むことができるでしょう。

 

まとめ

セカンドライフにおいては、一般的に収入は下がる傾向にあります。そのため、将来の収支バランスを現役時代から少しずつ意識しておくことが必要です。

 

特に収入の高い方は、年金額には上限があることに留意しておきましょう。年収が高ければ高いほど、年金額も青天井で増えるわけではないことに注意すべきです。収入よりも、支出があまりにも多い場合、支出の見直しが必要となることがありますが、大きな見直しは生活水準の低下にもつながりかねません。

 

今後の生活を続けるために残しておくべきもの、見直すべきものの優先順位をつけ、家族の理解や協力を得ることが大切です。

 

<参考>

2020年破産事件及び個人再生事件記録調査

 

 

伊藤 貴徳

伊藤FPオフィス

代表
 

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