日本人の年間給与所得額の平均は443万円です(国税庁)。ただ、いまの日本には「平均以上の収入」があっても豊かな生活を送れないという現実があります。年収520万円、お小遣い月1万5,000円でも「毎月10万円の赤字生活」という須藤慎太郎さん48歳への取材でみえた“日本のリアル”を、『年収443万円』(講談社現代新書)著者でジャーナリストの小林美希氏が解説します。
年収520万円の48歳サラリーマン“お小遣いは月1万5,000円”…平均年収以上でも「仕事の経費すら怖い」という日本の現実【ジャーナリストの実録】 ※画像はイメージです/PIXTA

転職で収入減少…「毎月10万円」の赤字

神奈川県・須藤慎太郎(48歳)・会社員・年収520万円

――本当に、もう、何もしちゃいけないんですよ。何かしたらお金を使うでしょ。じっと動かないでいるしかないんです。

 

異業界から保育業界に転職して3年間、保育園を運営する会社の本部で働いていました。それ以前は年収が800万円あった時もあるんです。けれど、保育会社に転職したら年収は520万円に減りました。手取りだと400万円。

 

転職して収入が下がったことを妻には言えないでいました。日本の転職はまだまだネガティブに見られて、前職より賃金が低くなるでしょう。でも、管理職採用だから上がると見込んでいたので、前の職場時代に妻に内緒で作っていた銀行口座があって、虎の子のへそくりで毎月の赤字を補塡していました。

 

それでも足りず、祖母が遺産として残した田舎の一軒家の家賃収入が月4万5,000円あるので、それも家計に投入しました。今は実家の近くのマンションに住んでいますが、家は買えません。

 

赤字は毎月10万円。これって、一般的な家庭像で夫が大黒柱で妻が扶養の範囲内で働くとちょうどいい、というのと合致しますよね。なんだか、そういう典型的な夫婦のモデルケースになれないって、人生の脱落者という扱いなのかな、って思っちゃうんです。

 

夫がサラリーマンで妻が社会保険料を支払わなくていいように月8万80,00円に調整して働く。それが中流家庭なんでしょう。だから、うちは中流以下。でも、そもそも中流って何なのでしょうね。

 

月1万5,000円のお小遣いでやりくり

僕のお小遣いは、昼飯代も込みで月1万5,000円です。基本、弁当です。昼飯を外で食べたとしても500円で収めないと。あとは、おごってもらえるような人と外に出るしかない。もうサバイバルですね。

 

モバイルのお財布とか、ICカードで支払うと使いすぎが分からなくなるのでヤバい。現金主義です。仕事の経費は怖いですね。精算するまでお金が戻ってこないのですから。

 

でも、僕の中学、高校時代の友人も小遣いの金額は同じようなもので、そんなに低いとは思っていません。

 

ただ、1万5,000円ですから、何もしちゃダメなんです。何かしたら使わないといけない。じっとしていないと。

 

インターネットで買い物をするときは必ず妻の許可をもらいます。お茶を買うのがもったいないので、今の職場では福利厚生でウォーターサーバーを要望しています。

 

同じ年収でも独身なのか、妻や子どもがいるかで当然、変わってくると思いますが、僕のように片働きで妻子がいると年収520万円ではつらいですね。給与が入ったらまず20万円をおろして、自分の小遣いの1万5,000円を財布に入れます。残りが家賃などの生活費。娘の学資保険が月2万円くらい。

 

10万円が足りないくらいなので、貯金はできません。手取り40万円ないときついです。年収が700万円あればトントンかな。

 

娘の学費がこれからどのくらいかかるのか、まったくイメージがつかないです。もう、大学なんて行かなくていい。早く社会人になって。そう思っています。娘はアイドルかトリマーになりたいと言うので、金の稼げる獣医になれって言っています。