都内で生まれ育った35歳の米田さんは、自治体の「会計年度任用職員」として週4日働き、年収は348万円です。夫の収入と合わせると世帯年収は1,000万円ほどありますが、本人は「気が気でない」「板チョコ1枚も買えない」と嘆きます。いったいなぜなのでしょうか。『年収443万円』(講談社現代新書)著者でジャーナリストの小林美希氏が、米田さんへの取材から“世帯年収1,000万円でも不自由な国”日本の実態を暴露します。
世帯年収1,000万円、実家近くに持ち家と「理想的な環境」だが…35歳・女性「私は下のほうで生きている」と嘆くワケ【ジャーナリストの実録】 (※写真はイメージです/PIXTA)

“板チョコ1枚が350円かぁ。あー、ダメ、ダメ。買えないです”

「私は下のほうで生きている」コンビニは行かず、クーラーもつけない生活
──東京都・米田美鈴(35歳)・自治体職員・年収348万円(世帯年収1,000万円)

 

世帯収入は1,000万円…そこそこ「良い家庭」のはずが不自由な生活

板チョコ1枚が350円かぁ。しかも、税抜き。あー、ダメ、ダメ。買えないです、買えないです。つい先日、買い物途中でお菓子を眺めていたら、ちょっと身震いしてしまいました。意外と、欲しいものって買えないんだなって。

 

私は生まれも育ちも東京23区内で、実家の近くに2年前に家を買って、娘と息子がいて。両親が近くに住んでいて、姉の家族も近くに住んでいるので、姪(めい)っ子と私の子どもが遊べて、すごく良い環境で暮らしていると思うんです。

 

そして、1年更新だけど、自分が好きな仕事ができている。夫と私の収入を合わせれば1,000万円くらいになるんですよ。そこそこ「良い家庭」のはずだけど、なんだか不自由に感じるんです。

 

さっきの板チョコですけど、フェアトレードで有名な「ピープルツリー」のチョコなんです。だから、板チョコが1枚350円もするんです。税込みだと388円かと思うと、買えないなぁ。板チョコでしょ? と思うと、「明治」や「ロッテ」の板チョコでいいじゃん。それも、安いスーパーで、88円で買わないと。消費税がつくと、もっと高くなるし。「底値」とか「得シール」(お買い得)がついてないと買えないです。

 

私、結構、意識が高いほうだと思ってきたのに、いざとなると板チョコ1枚が買えないんです。高いと思って。

 

それもそのはずですよ。世帯年収が1,000万円あったって、私の仕事は不安定だし、夫の収入は、おおげさにいえば、乱高下(らんこうげ)する。うっかり贅沢なんてしていられないんです。