(※画像はイメージです/PIXTA)

米国に比べ、5年遅れている日本の不動産業界DX。現状を打開すべく、日本でも不動産とテクノロジーを掛け合わせた「不動産テック」を推進する企業が増えつつあります。そこで本記事では、業界のリーディングカンパニーであるリーウェイズ株式会社の代表取締役社長・巻口成憲氏による業界の近況解説とともに、同社をはじめとする、いま注目すべき「不動産テック企業」を4社紹介していきます。※2023年6月11日更新

“アナログな商習慣”を破壊するリーウェイズ株式会社

2014年設立の不動産テック、リーウェイズ株式会社。「テクノロジーによる不動産取引環境の新エコシステムの確立」をミッションに掲げ、不動産取引にかかわるすべてのプレーヤーに対し透明性の高い取引環境を提供することで、「不動産取引の新世紀」の創出を目指している。

 

不動産をAIで査定できるサービス『Gate.』

同社の主力事業は2つある。1つは2017年にリリースした不動産事業者向けAI業務システム『Gate.』だ。業界最大の2億件超の不動産取引データと人工知能(AI)による分析機能を搭載しているのが大きな特徴だ。

 

国内唯一で、かつ高精度な将来収益予測が可能で、誤差率わずか「4.98%」の高精度な賃料予測を実現している。価格査定だけではなく、将来における「空室リスク」や「賃料下落」購入から売却までの「全期間における利回り」も分析可能だ。

 

高い性能が認められ、大手不動産業者をはじめ300社以上の不動産関連会社のほか、不動産AI査定の分野では唯一、金融機関も導入し、融資審査に活用している。

 

出所:© LEEWAYS Inc. 
Gate.プロダクトイメージ 出所:© LEEWAYS Inc. 

 

巻口氏は、「当社のようなベンチャー企業が金融機関と取引するのはかなりハードルが高いのですが、10行以上の金融機関で導入していただけているのは、『Gate.』の能力を高く評価していただいた結果だと考えています」と胸を張る。

 

実際、『Gate.』の成長は著しい。

 

リリースして5年間の年平均成長率は54%で、毎年1.5倍のペースでスピード成長しています

 

出所:© LEEWAYS Inc.
[図表4]年平均成長率(CAGR) 出所:© LEEWAYS Inc.

 

『Gate.』の特徴、他社の類似サービスとの違いについて、巻口氏は次のように説明する。

 

AIで不動産物件の査定を手がけるプレーヤーは多く、当社の調べで30社近くあります。当社が同業他社と圧倒的に違うポイントは、他社が出しているのは価格で、我々が出しているのは価値だということです。

 

価格と価値は似ていますが、まったく違うものです。価格というのは、文字どおり不動産価格のこと。いま売ったらいくらか、または、いま買うといくらかという現時点での価格を決めています。一方、価値というのは、いくらで買えるものが、どれだけのものを生み出すか、当社はそれを経済的な価値だと考えています。

 

不動産の査定は、3つの方法を総合的に評価します。『費用性』『市場性』『収益性』です。費用性は、いくらのコストで建てられるのかということ。市場性は、同じような条件の物件がいくらで取引されているかということ。収益性は、いくらのキャッシュを生むかということです。

 

同業他社の多くは価格(市場性)を査定しているのに対し、当社はいくらのキャッシュを生むか(収益性)を出している点が最大の違いです

 

巻口氏によると、特に投資用物件の場合、将来収益の予測が重要になるものの、不動産業界にはその判断基準がないと指摘する。

 

「投資用不動産では通常、表面利回りという指標が使われています。たとえば、1,000万円の物件があり、家賃収入が満室なら月60万円だとすると、収益性は6%です。これが表面利回りです。ただ、この表面利回りは未来永劫ずっと続くわけではなく、不動産は古くなったら家賃は下がります。

 

東京23区は、30年平均で28%家賃が下がります。大阪は同43%、名古屋は同47%下がる。東京23区でも港区と板橋区では下落率が違います。しかし、不動産業界では、募集広告などに不動産価格と表面利回りしか書かれていません。これでは投資家が投資に失敗するのは当然ともいえるのではないでしょうか」

 

出所:© LEEWAYS Inc. 
[図表5]家賃の下落率 出所:© LEEWAYS Inc. 

 

物件の将来収益を予測するためには、不動産市場全体を網羅した豊富なデータ基盤が必要になる。米国には「MLS」というデータ基盤があるが、日本の「レインズ」では不十分だという。

 

そこで当社は2008年から現在まで約15年間、独自にデータ収集を続けてきました。不動産業界として一元管理されたデータはありませんが、インターネット上には不動産各社がさまざまなデータを広告のために出しており、それらを集めた結果、2億件超の不動産のビッグデータを保有するに至りました。これだけの不動産ビッグデータを保有する会社は国内には存在しません

 

このビッグデータとAIを活用して分析する独自システムが『Gate.』だ。

 

ボタン1つで査定や50年先までの収益分析などができます。しかもベテラン社員も新人も誰もが同じレベルで分析ができる。現在、あらゆる業界で人手不足が深刻化していますが、不動産業界も同じで、新人がベテラン並みの査定ができる点が高く評価されています

 

不動産業務のDXコンサルティングも手がける

リーウェイズが手がけるもう1つの主力事業は、「総合DXコンサルティングサービス」だ。不動産業務のDX戦略策定から各種ITサービスの導入、新規サービスや業務システムの開発・運用に至るまで、実績豊富なコンサルタントが不動産テックを活用したビジネスの変革を総合的に支援している。

 

実は、巻口氏はかつて大手コンサルティングファームでコンサル業務に従事した経験があり、その知見を生かした不動産関連業務に特化したサービスだ。

 

たとえば、『Gate.』のシステム基盤を最大限に活用することで、ゼロベースの新規開発と比べ、圧倒的な低コスト・短納期でのシステム導入を可能にする。また、DXタイプ別の開発フレームワークとプリセットAPIによる迅速なアジャイル開発により、業務のデジタル化を加速させる。

 

具体例として、オリックス銀行では銀行業界初のAI査定で不動産の将来キャッシュフローを試算できる投資用物件情報サービスを提供している。最長50年先のキャッシュフローをシミュレーションすることで、「将来の投資・ローン返済のリスクを見える化する」サイトを構築。個人投資家向けに会員制(無料)でサービスを提供している。

 

リーウェイズ株式会社の今後

巻口氏は今後の展開として、「日本の投資不動産は不動産市場全体の約4割(約724兆円)を占め、当社はこの市場をターゲットにサービス提供してきましたが、今年夏をメドに自宅市場(784兆円)を対象にしたサービスを立ち上げる予定です。これにより日本の不動産業界全体をサポートできる体制の構築を目指します」と語る。

 

 

巻口 成憲

リーウェイズ株式会社

 

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