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親の死後、実家をどうするかという問題は多くの家庭で起こり得ます。本連載は、司法書士法人みどり法務事務所が運営するコラム『スマそう−相続登記−』から一部編集してお届け。本稿では、実家の名義変更のやり方や手続きの基本的な流れ、注意点について解説します。

不動産の登記をしないとどうなる? 費用をかけてでも司法書士に依頼すべき?

不動産を相続または贈与によって取得した場合、名義変更を行うのが通常です。それでは、不動産の名義変更を行わないと、どのような不都合が生じるのでしょうか。本項では、それについて説明していきます。

 

次の相続が起きると権利関係・手続きが複雑になる

相続登記をしないまま放置すると、その間に不動産の現所有者が死亡して次の相続が発生し、相続関係、相続手続きは複雑となります。

 

例えば、祖父→母→自分へと不動産を相続したケースで、不動産の名義が祖父のままだと、遺産分割協議は祖父の相続人と母の相続人を含めて行う必要があり、相続人調査は煩雑となるばかりか、相続人の数が多いため相続人同士がもめてしまい、遺産分割協議がまとまらないおそれが出てきます。

 

また、不動産の名義人の代が古いと、現代とは戸籍の見方が異なるため、必要書類を収集するのは慣れていない人にとって非常に困難となり、司法書士等の専門家に依頼せざるを得なくなります。

 

不動産の売却・抵当権の設定ができない

不動産登記は、不動産の権利関係を公示する制度であるため、原則として、途中の権利移動を省いた登記は認められません。

 

例えば、父から不動産を相続したため、その不動産を売却しようと思っても、不動産の名義が父のままだと、父から買主名義にすることはできず、自身に相続登記をしてから買主の名義にする必要があります。

 

そのため、相続不動産を売却・担保にする予定がある場合、相続登記をしておかないと、相手方に損害を与えかねません。

 

不動産が差し押さえられる場合がある

民法上、不動産を取得しても、登記をしておかなければその権利を第三者に対抗(権利の主張)することができません。

 

例えば、相続人がAとBの二人のケースで、遺産分割協議によりAが単独で不動産を相続し、それを登記しないままでいると、Bの債権者が、Bの法定相続分の限度で不動産を差し押さえたとしても、AはBの債権者に対し、遺産分割協議によりAが不動産をすべて相続したことを主張できません。

 

※不動産が相続された場合、遺産分割協議をするまで所有権は相続人同士の共有状態になる

 

法改正により過料に処せられる恐れがある

これまで相続登記は義務ではありませんでしたが、所有者不明土地による土地事業の阻害や近隣土地への悪影響の対策として法改正が行われ、令和6(2024)年4月1日以降は相続登記の申請が義務となりました。

 

その法改正の内容を簡潔に言うと、令和6(2024)年4月1日以降、相続があったことを知った日から3年以内に相続の登記をしなければなりません。また、令和6(2024)年4月1日より前に相続があった場合でも、同日より3年以内に相続の登記をする必要があります。

 

そして、この相続登記の申請義務を、正当な理由(注1)なく怠ると10万円以下の過料に処すこととすると定められました。

 

注1:正当な理由があると考えられるのは次のようなケースです。

 

・数次相続が発生して、相続人調査や必要書類の収集に多くの時間を要する

・遺言の有効性や遺産の範囲等が争われている

・申請義務を負う相続人自身に重病等の事情がある

まとめ

以上が、不動産の名義変更の手続きについてです。現状、不動産の名義変更は必須ではありませんが、上述した通り、不動産の名義変更をしない場合は不都合が生じるので、不動産を取得した場合はすぐに名義変更の手続きを行うべきです。

 

ただ、名義変更の手続きは、慣れていない方にとっては難しく思うかもしれません。本記事を参照し、自身で手続きを進めるのが無理そうと感じたのであれば、専門家に相談することをおすすめします。

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