(※写真はイメージです/PIXTA)

公的年金の不足が叫ばれて久しい昨今、多くの人は預貯金に励み、定年退職後もそれなりに働く心づもりでいるだろう。現役時代から贅沢を慎み、定年後はペースを緩めてのんびりしようと計画しても、もしかしたら、思い通りに運ばないかもしれない。実情を探る。

大卒サラリーマン、最高給与額で定年退職へと向かう

もうじき60歳で定年退職の大卒サラリーマン。20代はバブル経済真っ盛りの華やかな空気を楽しみ尽くし、30代はバブル崩壊により、時代は一気に不景気へ。40代になって少し景気が上向くも、その後のリーマンショックで失速。50代ではアベノミクスの効果でが見え始めたが、突然降りかかってきたコロナ禍…。

 

振り返れば、ジェットコースターのような波乱に満ちたサラリーマン生活ではあったが、とはいえ、給与額はピークのまま定年退職へ。20代は23万円強だった月給も、その後右肩上がりに上昇し、最終的には月収51万円、年収800万円超で定年退職だ。

 

◆年齢別・大卒サラリーマンの月収/年収

 

20~24歳  235,100 / 3,468,100
25~29歳  272,800 / 4,565,100
30~34歳  319,300 / 5,381,200
35~39歳  375,500 / 6,307,300
40~44歳  414,800 / 6,855,000
45~49歳  455,400 / 7,460,300
50~54歳  500,000 / 8,240,500
55~59歳  513,800 / 8,348,900

 

出所:厚生労働省『令和4年賃金構造基本統計調査』より算出

※数値左:月収(所定内給与額)、右:推定年収

 

長い会社員生活、振り返れば紆余曲折あった。しかし、無事に勤めてきた自分をほめてあげたい――。そんな万感の思いで迎えるであろう定年と、手にする退職金。

 

日本経済団体連合会による『2021年9月度退職金・年金に関する実態調査』によると、「管理・事務・技術労働者(総合職)」の大学卒・60歳定年(勤続年数38年)の退職金は2,243.3万円、高校卒(同42年)が1,953.0万円。大卒であれば、2,000万円を超える退職金を手にできる。苦労を掛けた妻と一緒に、頑張ったご褒美を…そんな気持ちを抱くのも、無理からぬことだ。

一生懸命「自分たち夫婦の老後」を考えていたが…

数年で定年退職を迎えるという、ある会社員の男性は語る。

 

「大学卒業後、今の会社で地道に働いてきました。たいして出世はできませんでしたが、自分なりに頑張った結果ですので、納得しています」

 

子どもも独立し、今はパート勤めの2歳年下の妻と2人の生活。子育てで資産形成には苦労したものの、堅実な妻のおかげでそれなりに貯金もできた。数年後は退職金も2000万円手に入る。どのような形であれ、65歳までは働くことになるだろうが、定年退職後は少しだけ羽を休め、妻と2人、のんびりする時間を持とうか…。

 

「老後の資金計画は、それなりに考えてきたつもりです。年金と預貯金、退職金で、夫婦2人でなんとかやりくりできる予定でした。しかし、実家の母親からSOSがありまして…」

 

男性の母親は70代後半。男性の父親である、自営業をしていた夫を亡くしたあと、東京郊外の手狭な賃貸マンションに住み替え、ひとり生活していたという。男性の父親が亡くなったとき、母親の老後のため、男性は相続放棄していた。その後、男性が母親に資産状況を聞いても「大丈夫」「心配ない」としか言わなかったそうだが…。

 

「父親の商売は順調で、私も奨学金なしで大学に行かせてもらいました。母親の経済状況は心配したことがなかったのですが、もっと詳しく事情を聞いておけば…」

 

男性の母親の貯金は底をつき、もともと自営業であることから年金も少額。年齢からくる健康問題で、要介護の将来も、現実味を帯びてきた。

 

「母が高齢になったら、いずれは父が遺したお金で施設に入ってもらおうと考えていました。しかし現状では、母の年金だけでは費用が賄えないため、うちからの持ち出しになります。思い描いていた老後計画も、大幅変更することになりそうです…」

 

国立社会保障・人口問題研究所『第8回世帯動態調査』によると、少なくともひとりの子と同居している親の割合は、年齢を重ねるごとに減っていき、70歳代前半で35.7%まで低下するものの、70歳代後半から上昇傾向に。85歳以上では 55.0%に達する。つまり、60歳で定年した「子」の立場からすると、次第に親と同居になるケースが多くなるということだ。

 

おそらく、配偶者との死別のほか、加齢による親が介護・介助の必要性といった背景があるのだろう。

 

内閣府『令和4年版高齢社会白書』によると、要介護者を介護する人で、「同居する配偶者」23.8%にいて多いのが「同居する子」の20.7%、さらに7.5%が「子の配偶者」と、家族総出で、親の介護を中心とした生活になる可能性も考えられる。

 

定年後に立ちはだかる「親の介護問題」。介護費用については、年金や貯蓄で賄えるケースが多いため、話を聞いた男性のように、金銭的な負担が大きいケースばかりではないだろう。そうはいっても、親の介護問題が浮上すれば、想定していた悠々自適な老後とは、違ったものになる可能性は高い。

 

老親がいる人は、自分の老後を考えるだけでは不十分だといえる。同時に、親の介護についてもしっかりと備え、計画を立ておくことが望まれる。

 

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