(※写真はイメージです/PIXTA)

プライム市場上場の大企業に勤め、年収1,300万円のAさん。ある日、すでに定年退職している元上司のBさんから「金を貸してほしい」と告白が……聞くと、いくつかの理由から「老後破産に陥ってしまった」とのこと。尊敬していたエリートのBさんが、退職後わずか4年で転落してしまった理由とは。牧野FP事務所の牧野CFPが、元エリートを襲った悲劇について紹介します。

「60歳で早期退職」は叶う?

上記のように助言をしたあと、筆者はAさんが、60歳と65歳でそれぞれ退職する場合のセカンドライフをシミュレーションしてみました。

 

現在Aさんは、長男への仕送りや住宅ローンの返済を含めて毎月50万円※4ほど支出があります。

※4 総務省「家計調査」(2022年)によると、50~59歳の消費支出額の平均は35万9,963円となっている。

 

また、Aさんと妻の老齢厚生年金の受給額は、[図表4]のとおりです。

 

出所:筆者が作成。なお、65歳まで5年間厚生年金に加入した場合、その分受給見込額も約24万円増額する。
[図表4]A家の年金受給見込額 出所:筆者が作成。なお、65歳まで5年間厚生年金に加入した場合、その分受給見込額も約24万円増額する。

 

Aさんが60歳で早期退職した場合、長男への仕送りは終わっていますが、Bさんと同様、65歳まで無収入となります。[前掲図表2]の不足分(②)をいかに少なくするか、貯蓄と退職金で補う生活となるでしょう。海外旅行などを計画する場合には、65歳まで我慢し、老齢厚生年金を受給してからのほうが得策です。

 

一方、65歳まで働いた場合、60歳~65歳まではいままでより半減するものの給与収入があります。また、住宅ローンも完済していますから、退職金や貯蓄を取崩しながらも毎月「ゆとりある老後の生活費(平均37.9万円)※5」で生活することが可能です。

※5 生命文化センター「生活保障に関する調査」より。なお、同調査では、老後最低でも必要とされる日常生活費は月額平均23.2万円となっている。

 

どちらの選択をするにしろ、加入している保険の不要な保障の解約など、無駄な支出を見直すことが大切です。

 

心を鬼にして断りの連絡…Bさんの返答は

AさんはFPに相談した翌日、心を鬼にしてBさんに「お金は貸せない」と連絡を入れました。

 

その後、再び会ってFPに聞いた話をもとにBさんを説得。すると、「心配かけたけどまた働くよ。今度の誕生日を過ぎれば年金がもらえるし」と前を向いてくれたそう。Aさんもほっと一安心です。

 

 

牧野 寿和

牧野FP事務所合同会社

代表社員

 

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