(※写真はイメージです/PIXTA)

人生100年時代、老後の生活資金を確保することはますます重要になっていきます。受給資格のあるものは漏れなく受給するべきです。サラリーマンが加入する厚生年金には65歳より前に受給できる「特別支給の老齢厚生年金」があります。しかし、本来受給資格があるにのに受給手続きをしていないケースがあります。最悪の場合、時効にかかってしまうことがあります。本記事では、受給資格や受給金額、手続き等について解説します。

特別支給の老齢厚生年金とは

特別支給の老齢厚生年金とは、本来の公的年金の受給開始年齢である「65歳」よりも前に老齢厚生年金を受給できる制度のことをいいます。ただし、後述しますが、現在65歳以上の方も、完全に無関係とはいい切れません。

 

おさらいしておくと、日本の公的年金制度は大きく分けて以下の2通りとなっています。

 

・自営業(第1号被保険者)、専業主婦(夫)等(第3号被保険者):国民年金

・サラリーマン(第2号被保険者):国民年金+厚生年金(2階建て)

 

サラリーマン、つまり会社員・公務員は国民年金と厚生年金の2階建てになっています。そして、特別支給の老齢厚生年金は2階部分の「厚生年金」における制度です。

 

これは、1985年に、厚生年金の受給開始年齢が60歳から65歳へと引き上げられたのに伴う経過措置として設けられたものです。

 

すなわち、それ以前は60歳から公的年金を受給できたのに、いきなり65歳になるまで受給できなくなるのは酷だということで、特別支給の老齢厚生年金の制度が設けられたのです。

 

特別支給の老齢厚生年金には、現役時代の報酬に連動して決まる「報酬比例部分」と、所定の条件に該当する人のみが受給できる「定額部分」の2種類があります。

 

以下、それぞれについて、受給要件を解説します。

「報酬比例部分」の受給要件

特別支給の老齢厚生年金の「報酬比例部分」の受給要件は以下の通りです。

 

・生年月日:男1961年4月1日以前生、女1966年4月1日以前生

・被保険者期間が1年以上

・老齢基礎年金の「受給資格期間」が10年以上

・受給開始年齢に達している

 

老齢基礎年金の「受給資格期間」とは、保険料を納付した期間のほか、学生納付特例を受けていた期間や、保険料の免除を受けていた期間も含みます。それらの期間の合計が10年以上であれば、老齢基礎年金の受給資格をみたし、それによって特別支給の老齢厚生年金の受給資格もみたすということです。

 

なお、学生納付特例や保険料の免除を受けた場合、老齢基礎年金を満額受け取れません。それに連動して、特別支給の老齢厚生年金の額も低く抑えられることになります。

 

受給開始年齢は、生年月日により異なります。以下の図表の通りです。

 

【図表1】報酬比例部分の受給開始年齢

 

請求手続きを忘れてしまったという方もいるかもしれません。その場合、遡って請求することはできます。

 

ただし、注意しなければならないのが、「時効」です。年金を受給する権利は5年で時効消滅します。2023年時点で、男性であれば、受給権が時効にかかっている方がいます。これに対し、女性はまだ時効にかかった方はいません。

 

なお、厳密にいうと、消滅時効には債権者が請求したにもかかわらず債務者が払わない場合の「中断」の制度があります。しかし、本記事では考慮しないものとします。

「定額部分」の受給要件

「定額部分」についても、一応、説明しておきます。受給できるのは、「報酬比例部分」の受給要件に加え、以下のいずれかの条件に該当する人のみです。

 

・厚生年金保険の被保険者期間が44年以上

・障害等級1級~3級

・厚生年金保険の被保険者期間のうち、坑内員または船員であった期間が15年以上

 

受給開始年齢は性別、生年月日によって異なり、【図表2】の通りです。

 

【図表2】定額部分の受給開始年齢

 

こちらは、2019年4月2日をもって、すべての方が65歳を超え、受給期間を終えています。

 

また、受給の手続きを忘れた場合も、年金の時効は5年なので、2023年5月現在、男性はすべての人が時効にかかっており、女性もほとんどの人が同様に時効にかかっていることになります(中断は考慮しないものとする)。

 

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和泉 昭子

KADOKAWA

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