(※画像はイメージです/PIXTA)

行動制限がなくなったことで、全国的に人出が増えた2023年ゴールデンウィーク。連休を経て脱コロナの本格化を実感し、今度こそ海外旅行をしたいと思った方も多いのではないでしょうか。夏休みを利用して海外旅行をするのであれば、そろそろ計画を立て始めなくてはいけません。WHOが緊急事態宣言を終了すると表明したばかりの今、諸外国の観光はどれほど再開しているのでしょうか? 本稿では「スペイン」の現状について、キャピタル アセットマネジメント株式会社 代表取締役・山崎年喜氏が解説します。

コロナ前の活気を取り戻しつつある日本だが、諸外国は

皆さん、いかがお過ごしでしょうか。東京駅では朝方ディズニーランドに向かうたくさんの旅行者の中に、多くの外国人を見かけます。成田の新勝寺通りでは、鰻を食する外国人も多かったです。新型コロナウイルスが収束し、ゴールデンウィーク中、日本各地でコロナ前のような活気がみられるようになりました。

 

私は日本のみならず、世界が新型コロナウイルスで苦しんだあの2年間を思い返しています。いつかはコロナ禍が終焉するだろうという思いや、コロナ禍が明けたら外出したい、旅行に行きたいという思いが、今まさに叶ってきているようです。

 

前置きはこれくらいにして本題に入ります。ゴールデンウィークが終わり、皆さんは、夏休みに向けて、本格的に旅行を準備されることでしょう。

 

今回から、いくつかのコラムを数回に分けて、「人の移動」をお伝えしてまいります。本稿ではスペイン、その後は、ヨーロッパ、中国の国・地域についての旅行をテーマにいたします。最後に日本をテーマとする旅行をご紹介する予定ですが、この間に第9波が到来しないことを祈っています。

「観光」を主要産業とするスペイン

まずは、スペインから。当社のパートナーで、フランスに次ぐ世界第2位の観光大国スペインに本拠地を置く運用会社GVC Gaesco GestionのCIO、Jaume Puig & Santiago Vazquezからのレターをご紹介しましょう。

 

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「スペインの主要産業は観光である」。多くのスペインの書物でも「観光はスペイン経済の主要な原動力」と説明されています。近隣諸国よりやや遅れて登場した観光は、戦争時(1919~1939年)まではビジネス(産業)として研究されることはありませんでしたが、戦争後、政治家や公的機関がその重要性を認識し始めました。

 

昔に遡ること1905年のアルフォンソ13世の時代には、国家観光委員会が設立され、モニュメントの修復と博物館の設立を任務としていた時期がありました。戦後の1951年には情報観光省が設立され、それ以来、観光は大臣部局の名で存在するようになったという経緯があります。

 

それほど時代を遡ることなく、2008年のリーマンショック時、スペインが苦しんだ経済危機の後でも、観光部門は他国と同じ程度に不況に見舞われましたが、むしろ、スペインでは観光活動が経済促進のための起爆剤となりました。その後長年にわたり、政治家や公的機関が観光部門を組織化するようになり、産業・エネルギー・観光省に付属するTURESPAÑAのような公的機関を設立し、観光を後押しするものとしての「スペイン」ブランドの宣伝・マーケティング、新しい観光企業の設立へのインセンティブ、スペインのホテル産業の拡大・改善などを推進していきました。

 

スペインでは、観光振興のためには、観光計画が無くてはならないものです。そして、それは時代状況に合わせて変化してもきました。最初の計画は、主に外国人観光客の増加を目的としたものでした。スペイン全土にわたり約8,000キロメートルにもおよぶ海岸線が存在するこの国は「太陽とビーチ」の代名詞であり、結果的にスペインの観光モデルの真髄である「太陽とビーチ」において、時間的・空間的な過密・集中という問題を引き起こしてしまったのです。

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少し本題から外れます。以前、当コラムで旅行に関してのお話をさせていただきましたが、ヨーロッパ人はなぜ、太陽を求めるのでしょうか? なぜ引退後の移住先としてスペインは人気があるのでしょうか? 

 

推測ではありますが、スペインの天候とヨーロッパ人の健康が大いに関係していると思います。加齢とともに骨密度は低下し、骨粗鬆症を発症するリスクが高くなりますが、骨密度の低下を予防するには、カルシウムの吸収を高める必要があります。カルシウムの吸収を促進する栄養素はビタミンDです。そして、そのビタミンDの生成のためには太陽の光に当たることが欠かせないのです。すなわち、骨密度の低下予防には、日光浴が必要だという論理が成り立つことになります。

 

英国の年間日照時間は1,400時間程度、ドイツやオランダは1,600~1,700時間ですが、スペインの年間日照時間は、およそ2倍の3,000時間と言われています。健康維持がスペイン移住の理由になるのではという推測です。これが、バカンスの原点だったのではないでしょうか。バカンスに出かけた人は、体調が良くなっていることに気づいたのでしょうか。

2023年の外国人観光客(予想)は「過去最高」に迫る

本題に戻りましょう。現在では、より良いものをより多く消費できる富裕層の観光客の要求は厳しくなり、また、その内容も多様化しています。これらの要因により、レジャーや休暇を目的とした旅行の主な理由に「太陽とビーチ」を選んだ人の割合は、90%から72%に減少しています。

 

スペインの観光収入は増加傾向にあり、GDPの約11%を生み出しています。2018年と2019年には、すべての記録が更新されました。8,000万人以上の観光客が休暇先としてスペインを選びました(2018年の海外観光客は8,260万人、2019年は8,370万人、2023年は8,240万人の予想です(【図表】参照)。

 

出所:スペイン国立統計局(INE, National Institute of Statistics of Spain)
【図表】スペインの年間外国人観光客数(百万人) 出所:スペイン国立統計局(INE, National Institute of Statistics of Spain)

 

付け加えますと、スペインでは、大手観光会社の国際的な統合が進んでおり、ホテル業界はますます品質が改善しています。

 

今年の代表的なデータをご紹介します。スペイン国立統計局(INE)のデータによると、2023年2月のスペインにおける観光関連の支出は53億3,000万ユーロと過去最高を記録し、パンデミック前の水準を大きく上回りました。2023年2月にスペインを訪れた外国人観光客は430万人に達し、2022年2月と比較すると35.9%増加しました。彼らは、スペインでの旅行・滞在中に、2022年2月に比べて41.1%多い15億5,000万ユーロを消費しました。2023年1~2月は、スペインを訪れる観光客数が49.1%増加し、約850万人に達しました。これは、パンデミック前の2019年1~2月の累計値より1.3%低いだけです。

 

英国からの観光客が非常に多く、2月に78万4,496人がスペインを訪れ、この数字は2022年の同月と比較して35.6%の増加になります。英国に続いて旅行客数で多い国は、フランスとドイツで、それぞれ63万6,530人と50万9,883人です。ちなみに、滞在先を地域別に見ると、2月に訪れた外国人観光客の数では、カナリア諸島が最も多く、続いてカタルーニャ地方が2番目、そしてアンダルシア地方が3番目となっています。

観光立国・スペインの「V字回復」が示すこと

今回お伝えしたかったことは、これらの驚くべき数字がいかに持続可能で健全な観光の実態を示すものであり、それは弱まる兆候のないトレンドになっているということです。

 

余談になりますが、スペインはまた、映画のロケ地としても有名です。『夕陽のガンマン』、『ドクトル・ジバゴ』、『パットン大戦車軍団』、『アラビアのロレンス』といった名作がスペインで撮影されています。なぜ、スペインは映画のロケ地に最適なのでしょうか。スペインの気候と景観の良さが理由だと思います。太陽、海岸線、山々といった自然の景観に加え、古代ローマ遺跡などの歴史的遺産も多くあり、映画の撮影にはうってつけの場所であったということでしょう。

 

映画産業にとって魅力のある国は、外国人観光客を惹きつける力もあります。スペインが、外国人観光客の誘致に注力し始めたのは1960年代のことです。内戦や第二次世界大戦の傷が未だ癒えず、脆弱な経済に喘いでいたころ、これを打破しようと、自然の景観を売り物に外国人観光客誘致キャンペーンを展開していきました。そしていつしか観光政策が経済政策の柱になったのでしょう。

 

最後に、日本では、2023年3月の訪日外国人客数(推計値)が公表されました。個人旅行再開以降では最高を更新し181万人に達しました。

 

 

山崎 年喜

キャピタル アセットマネジメント株式会社 代表取締役

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