毎年、自分の誕生日月に届く「ねんきん定期便」
サラリーマンなら知っている「ねんきん定期便」。毎年の自分の誕生日月に届く、あのお知らせだ。
50歳未満の人(35歳、45歳を除く)は「保険料納付額・月別状況(直近13月)・年金加入期間・これまでの加入実績に応じた年金額」が記載されたはがきが届く。
「ねんきん定期便」には電子版「ねんきん定期便」もあり、日本年金機構の「ねんきんネット」のユーザーIDを取得することで利用できる。ハガキ版の「ねんきん定期便」と同様の内容が確認できるだけでなく、ダウンロード機能もあり、年金記録の確認や管理に役立つ仕組みだ。
ちなみに、「ねんきんネット」の郵送意向登録機能で、ハガキ版「ねんきん定期便」の郵送停止の意向も登録できるので、ペーパーレス化も可能だ。ただ、共済組合に加入している人は、加入されている共済組合から「ねんきん定期便」が送付されるため、(日本年金機構による)電子版「ねんきん定期便」の利用はできない。
自分の年金受給はまだ先、という人は、じっくりと見たことがないかもしれないが、いつかはお世話になるものである以上、ぜひとも真摯に向き合って確認してほしいものだ。もしかしたら、年金の加入記録にミスがあるかもしれない。そんな万一が不安な人は、「年金加入記録回答票」に必要事項を記入して提出しよう。
今年50歳、「去年と記載内容が違うのだが…?」
実は、老齢年金の記載内容は、50歳未満と50歳以上で異なる。50歳未満なら、これまでの加入実績を基に計算した老齢年金の見込み額、50歳以上であれば、現在の年金制度で60歳まで加入し続けたものと仮定して計算した老齢年金の見込額が記される。
20歳で社会人となり、平均的な給与額を手にしてきた49歳のサラリーマンを例に考えてみよう。この時点での平均給与(所定内給与)は月38.2万円、年収は627万円だ。この年の誕生月に手にする「ねんきん定期便」には、これまでの加入実績に応じた年金額が記載されている。
厚生年金の受給額は、加入期間が2003年3月までは、①「平均標準報酬月額(≒平均月収)×7.125/1000×2003年3月までの加入月数」、加入期間2003年4月以降は、②「平均標準報酬額(≒平均月収+賞与)×5.481/1000×2003年4月以降の加入月数」で計算できる。
便宜上、②で計算すると、平均的なサラリーマンの49歳時点の平均標準報酬額は41万円。この時点で手にできる厚生年金額は月6.5万円ほどだ。国民年金は、月4.6万円ほどになる。つまり、この時点で保険料をまったく支払うことなくなれば、65歳から月11.1万円の年金を手にできるということ。そのようなことが「ねんきん定期便」からわかるわけです。
「ええっ、月額たった11万円!?」
「ダメだ、老後崩壊、確実だ…」
「ねんきん定期便」を手にした人のなかには、早とちりをして、記載されている年金額に衝撃を受ける人もいる。49歳なら、あと10年勤めれば年金額は増加する。前述のとおり、50歳になれば、会社員を60歳まで続けた場合の年金額が記されるようになるのだ。ちなみに50代前半の平均給与(所定内給与額)は、月41万円、年収は671万円である。
60歳まで平均給与を手にするサラリーマンの平均標準報酬額は44万円。49歳時点より3万円増加する。そこから算出される厚生年金の受給額は月9.6万円。国民年金は満額月6.4万円なので、60歳まで無事に勤めれば、65歳からは月16万円の年金を手にできることがわかる。
年金額、5万円増えた――。
50歳のサラリーマンは、これを見て安堵するのであろうか。
総務省『家計調査 家計収支編』(2022年)によると、65歳以上の単身世帯、1ヵ月の消費支出は平均14万9,208円。この数字から、40年間頑張ってきた「平均的なサラリーマン」であれば、「年金だけで生きていく」というビジョンも描けるかもしれない。
しかし、本当にそれで大丈夫なのか。年齢を重ねて高まる健康リスク、医療費・介護費への懸念、ここ最近の急激なインフレ。そんな事態を考えれば、「年金だけで十分」とはとても言えないのではないだろうか。
もちろん、必要額はライフスタイルや考え方によっても大きく違うだろうが、年に1回の「ねんきん定期便」を熟読し、老後の資産形成についても、よく考えることをお勧めする。
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