リスクだらけの「タワマン暮らし」を国が止めないワケ
タワマンに住むようなパワーカップルは、できるだけ上層階を買いたがる。そこから下界を見下ろして、「俺ら勝ち組だぜ」と自分に酔っているわけだが、夫婦ともに35年ローンを組んでいたりする。
夫婦どちらかがリストラにあえば、すぐに破綻(はたん)するし、タワマンの資産価値が暴落する可能性もある。現実に韓国や中国ではひどいことになっている。不動産バブルが崩壊して売るにも売れない。しかも金利が上がってきているので、住宅ローンが返せなくなってきている。
トカイナカで自産自消の生活をすることは、災害時にも安心だ。流通が止まって食品が買えなくなっても、わが家は畑からジャガイモやサトイモを掘ってくれば何とかなる。政府は30年以内に7割の確率で首都直下地震が発生すると言っているが、リスクはそれだけではない。東京北部に線状降水帯が停滞して荒川(あらかわ)が決壊すれば、東京23区の3分の1が浸水する。
私の事務所は東京都中央(ちゅうおう)区の八丁堀(はっちょうぼり)にあるが、浸水深2メートル80センチになるとされている。1階の天井付近まで水没することになる。
それでも政府は国民のライフスタイルを根本的に転換させようとは考えていない。資本主義の奴隷として国民を位置付けているからにほかならない。そのほうが都合はいいのだ。税金は庶民に押し付けて富裕層はほとんど払わない国にしようとしているのだ。
森永 卓郎
経済アナリスト
獨協大学経済学部 教授
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