(※写真はイメージです/PIXTA)

相続時、法律上は「財産を平等に分け合うこと」と明記されています。とはいえ、家庭それぞれの事情から兄弟のうち「1人は故人(親)の面倒をみていたが、もう1人はまったくみていない」といった状況が生まれることもありがち。この際、法に則った平等な相続はかえってトラブルの種です。では、どうすれば「実質的に平等な相続」を叶えることができるのでしょうか。永田町司法書士事務所の加陽麻里布氏が、事例をもとに解説します。

兄に遺留分を渡さない「3つ」の方法

兄に遺留分を取得させない方法としては、「早期の生前贈与」「生命保険金の活用」「遺留分の放棄」の3つが考えられます。

 

1.早期の生前贈与

遺留分の請求対象となるのは、「贈与」と「遺贈」とされています。遺贈は必ず遺留分の対象財産となるものの、生前贈与に関しては一定の期間制限が設けられています。つまり、一定期間内に行われた贈与が対象となるため、早期の生前贈与が効果的なのです。

 

この「一定期間」は、相続人に対する贈与相続人以外に対する贈与かによって異なります。

 

・相続人に対する贈与だった場合

相続人に対する贈与だった場合、遺留分の請求対象となるのは「特別受益に該当する贈与」かつ「相続開始前10年前にされたもの」です。

 

特別受益とは、自宅購入資金として相当額を贈与していた場合などを指しますが、過去10年以内が対象ですから、たとえば11年前に自宅の購入資金として長女に2,000万円を支払っていた場合、相続時に財産がなくなってしまっていたとしてもこれは遺留分の対象にはなりません。この場合、長男は遺留分減殺請求をすることができません。

 

・相続人以外に対する贈与だった場合

相続人以外に対する贈与だった場合、「相続開始前1年間にされたもの」が対象となります。亡くなった方の孫は相続人とならないため、今回の事例における「長女の子ども(孫)」に亡くなる2年前に生前贈与をしていた場合は、遺留分の対象とならないということになります。

 

ただし、いずれも当事者双方が遺留分権利者(長男)に損害を加えることをわかったうえで行った生前贈与というのは、いま述べた時効の適用がないため注意が必要です。

 

2.生命保険金の活用

生命保険金は相続税の節税効果も認められますが、遺留分対策にも有効に活用することができます。

 

生命保険金の大きな特徴は、「相続財産とならないこと」です。少しややこしくなりますが、相続税法上は相続財産とみなされるため相続税が発生するものの、相続財産からは除外されるため遺産分割の対象にはならず、遺留分の対象ともならないのです。

 

ただし、生命保険金の過度の活用は要注意です。相続財産の50%以上が生命保険金の場合は、これが相続財産として扱われるという可能性があります

 

3.遺留分の放棄

遺留分対策としては、「遺留分の放棄」がもっとも確実な方法です。他の相続人の不当な圧力によって放棄されることがないよう、生前の相続放棄はできないとされていますが、遺留分は生前に放棄することが可能です。

 

ただしこの場合も、他の相続人からの不当な圧力によって放棄されることがないよう、遺留分を放棄する本人が家庭裁判所から許可を得る手続きを行う必要があります。

 

したがって、「遺留分の放棄」をしてほしい場合には相続人と生前に交渉し、自主的に放棄してもらうことが理想です。とはいえ、実際に実行してもらった場合は遺留分権利者(長男)に対して十分な代償が必要になってくるかと思います。

 

◆まとめ…“実質的平等な相続”のために早めの生前対策を

相続問題は、法に則って財産を分け合うということが必ずしも平等であるとは限りません。

 

各家庭事情によって異なるため、それぞれの事情に応じて“実質的に平等な相続”ができるよう、生前から相続対策をしておくことをおすすめします。

 

なにもしなければ、当然法的に財産を分け合わなくてはいけません。法律は、なんの決まりごともなかったときのために、“最後の解決方法”として存在します。ですから、「自分の家庭には特殊な事情がある」など思い当たる節がある方は、こういった生前対策をしっかりとることをおすすめします。

 

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加陽 麻里布

永田町司法書士事務所

代表司法書士

 

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