(※画像はイメージです/PIXTA)

自動車ユーザーが加入を義務付けられている「自賠責保険」の保険料が2023年4月から大幅に引き下げられています。しかし、同時に「被害者保護増進等事業の付加賦課金」が新設され賦課されています。その背景には、「自賠責保険」の保険料の運用益約6,000億円が「一般会計」に貸し出されたまま返済の目途が立っていないという問題があります。この問題について改めて解説します。

◆一般会計に貸し出された「約6,000億円」が返ってこない…

ところが、従来の「積立金」(自動車安全特別会計)から、約6,000億円が、一般会計に貸し出されたまま返済されていないという問題があります。

 

すなわち、1994年と1995年に「税収不足」を理由として、「自動車安全特別会計」から一般財源へ「繰り入れ」という名目で総額約1兆1,200億円の貸し出しが行われました。

 

そのうち、現在も約6,000億円が返済されていない状態です。

 

財務省は、国の財政事情が苦しいという理由によって、長らく返済を先送りにしてきました。2018年からようやく返済を再開したものの、返済額は低く、2022年度も54億円にとどまっています。これは借入金総額約6,000億円の1%にも満たない額です。それでも、前年度比7億円と大幅に増額しているのです。

 

なお、国もこの問題を重くみており、「一般会計から自動車安全特別会計への繰戻し」として、2023年(令和5年)度当初予算に60億円、2022年(令和4年)度第二次補正予算に12億円が計上されています。

 

しかし、それでも、約6,000億円という全体の金額からすればわずかな額といわざるをえません。

 

結局、積立金が枯渇するのを早めることになり、足りなくなる分を自賠責保険の保険料に「賦課金」として上乗せして徴収することになったといわざるを得ません。いわば、国の借金が自動車ユーザーにしわ寄せされる形です。

 

国土交通省は自賠責保険の公式HPにおいて、賦課金新設の経緯について以下のように説明しています。

 

【国土交通省 自賠責保険公式HP「なぜ賦課金の新設が必要なのか」】

「被害者支援・事故防止対策は、自賠責保険料・共済掛金を原資とした運用益を活用した積立金を特別会計で管理し、対策を実施してきました。

しかしながら、低金利により、積立金から生じる運用益は減少し、毎年度の被害者支援・事故防止対策の事業費に充てるため、継続的に積立金の取崩しが発生しており、このままでは早ければ10年以内に枯渇する可能性があります。

過去に実施した特別会計から一般会計の繰入金の残高もありますが、一般会計の財政事情は厳しく、まとまった額の一般会計から特別会計への繰戻しを期待することは困難な状況です。」

 

ここでは、賦課金新設の主因として、「低金利による積立金から生じる運用益の減少」が原因として「積立金の取崩しが発生」し、「積立金が早ければ10年以内に枯渇する可能性」があるためと説明されています。

 

しかし、同時に、「過去に実施した特別会計から一般会計の繰入金の残高」の問題も指摘しています。オブラートに包まれたような表現ですが、これこそが、上述した一般会計へ貸し出された約6,000億円が返済されていないことを意味しています。

 

自賠責保険の保険料は大きく引き下げられましたが、その内訳に着目すると、このように、自動車ユーザーがいわれのない負担を強いられているという問題が浮き彫りになります。

 

自賠責保険は被害者救済を目的とした強制加入という建前をとっているにもかかわらず、その保険料が、本来の制度目的と無関係な用途に貸し出されているというのは、健全な状態とはいえません。

 

また、そもそも自賠責保険については、以前から、存在意義をめぐって議論があります。すなわち、自賠責保険の制度が存在することを理由に任意保険に加入しない人がおり、かえって被害者救済の支障になっているのではないかとの指摘があります。

 

事実、損害保険料算出機構「自動車保険の概況(2021年度)」によれば、2021年3月末時点で、「対人賠償保険」「対物賠償保険」の加入率は、全国でみると「対人賠償保険」が75.1%、「対物賠償保険」が75.3%となっており、ほぼ4人に1人が任意保険に加入していないのです。

 

これらのことは、いずれも、自賠責保険の存在意義の根幹にかかわることです。交通事故の被害者救済という本来の制度趣旨に立ち返ることが求められています。

 

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