ここ数年、注目度が高まっている「民事信託(家族信託)」。大手信託銀行によるサポート・サービスの開始等を受けて、利用のハードルは大きく下がりました。今回は、民事信託を活用したことにより、希望する財産管理を実現した実例をご紹介します。

建て替え工事の長期計画、途中での判断能力低下を懸念

今回は筆者が勤める三井住友信託銀行に寄せらた相談事例を紹介します。いずれのケースも民事信託(家族信託)の活用がなければ委託者(本人)の意向に沿った財産の管理、運用処分が実現できないケースです。

 

まず最初の事例のお客さま(委託者兼受益者)は複数棟の賃貸レジを保有していましたが、建物の老朽化に伴って建て替えを計画しました。しかし、着手から全棟建て替えまでには相応の期間を要するため、自身の意思判断能力の低下がリスクとしてありました。つまり、本人が認知症等によって、意思判断能力が喪失した場合には、建て替えはもとより、大規模修繕等の実施にも支障をきたす懸念があったのです。

 

そこで、民事信託(家族信託)の活用を検討し、近居する長男を受託者として長男に建て替え計画の遂行を託したのが、下記の図に示した事例です。

 

[事例①]保有している賃貸レジの建て替えを行うための民事信託(家族信託)

 

 

共同所有の物件を、適切なタイミングで売却

次の事例のお客さま(委託者兼受益者)は、兄弟3人で収益不動産を共同所有しています。建物の老朽化がすすんだため、3人は建物の売却に合意したものの、市況を考慮した上で売却のタイミングを見極めたいという意向がありました。

 

長期的にタイミングを見計らう上で、特にお客さま①の意思判断能力の低下が懸念されたため、そのリスクに備える目的で、民事信託(家族信託)の活用を検討しました。そしてお客さま①の長男を受託者として、将来の円滑な売却の遂行を託したのが、下記の図に示した事例です。

 

[事例②]一族の共有名義となっている不動産の売却を行うための民事信託(家族信託)

 

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