ここ数年、「民事信託(家族信託)」に対する注目度が急速に高まっています。将来、自分が認知症などによって判断能力が低下したとしても、所有財産の適正な処分を託すことが可能であったり、二次相続までを見据えた財産の承継先を設定できたりといった特徴をもつ民事信託について、お伝えしていきます。

2006年の法改正で「民事信託(家族信託)」の
本格利用がはじまる

大正11年に信託法と信託業法がセットになって立法されたことからも明らかなとおり、日本の信託法は、当初より商事信託を念頭に置いていた点に大きな特徴があるとされています。英米と比較した場合、日本では信託実務において、家族信託を含む民事信託の利用が活発であったとは言い難い状況にありました。

 

その後80年余りの時を経た2006年に信託法が改正(施行は2007年)されたことで、初めて民事信託(家族信託)は本格的に使えるようになりました。つまり日本においては、民事信託の歴史はまだまだ浅いのです。

 

昨今、急速に高齢化が進んでいることにより、高齢者の判断能力低下への対応や、財産承継への対応の必要性が高まっています。その中で、コンサルティングを行う専門家(司法書士、税理士、弁護士等)やハウスメーカーを中心として、民事信託(家族信託)の活用を後押しする動きが活発化しています。

判断能力低下に備えての信託利用には4つのメリット

高齢者の判断能力低下に対応する社会的な枠組みとしては、後見制度(成年後見、保佐、補助、任意後見)や、民法上の委任契約の利用が考えられます。また、死亡による財産承継という観点からは、民法上の相続制度(特に遺言)を利用することも考えられます。民事信託をこれらの制度と比較した場合、その利用には以下のメリットが挙げられます。

 

1.後見制度に代わる柔軟な財産管理が実現可能

成年後見制度(法定後見・任意後見)では、資産の積極的活用や生前贈与等に制約があります。判断能力があるうちから、民事信託によって資産の管理・処分を託すことで、当初は本人の指示に基づく財産管理を、判断能力を喪失した後は信託契約時の本人の意向に沿った財産管理を実行できることになります。さらには、積極的な資産運用・資産の入換え(不動産の売却・買換・建物の建設等)も、受託者の責任と判断で可能となります。

 

2.法定相続の概念にとらわれない資産承継を実現

通常の遺言では、二次相続以降の資産承継先の指定はできませんが、家族信託を活用すれば、二次相続以降の資産承継者の指定が可能となります(受益者連続信託)。

 

3.財産の共有等に起因する紛争の予防

例えば、共有不動産は共有者全員が協力しないと処分できませんが、共有者(又は共同相続人)としての権利・財産的価値の公平性に配慮しつつ、信託により管理処分権限を共有者の一人に集約させることで、不動産の運用・処分が可能となります。

 

4.他の類似の制度との併用も有効

信託財産の内容や受託者の事務の範囲を自由に決定することが可能であるという信託の性質を活かし、信託と他の類似の制度とを併用することにより、委託者のニーズをより充足することができる場合もあります。例えば、特定の休眠不動産については信託を利用して、委託者の将来の判断能力低下時にも活用することができるようにしつつ、身上監護については任意後見契約で定め、金融資産については委託者が機動的に利用できるように信託をせず、遺言によって承継者のみを定めるといったことも考えられます。

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