「廃業」の正しい意味を理解している人は少ない
一般的に、企業の「廃業」という言葉には、回避すべきもの、事業の失敗という否定的イメージが伴います。また、廃業により日本のGDPが失われ、雇用が喪失すると騒がれることもあります。廃業で事業を止めてしまうと、従業員は仕事を失い、路頭に迷うことになるからです。
しかし、「廃業」の正しい意味は、個人事業主または会社の社長が、経営者の立場から引退することであり、事業そのものを消滅させることではありません。なぜなら、経営者が引退しても、事業に使っていた資産や雇っていた従業員、これまでに蓄積したお客様との取引関係を同業他社に譲渡すれば、何も社会的な損失は発生しないからです。つまり、円滑に事業承継をおこなうことができれば、経営者の大量に引退しても、問題はないのです。
具体的に説明しましょう。
経営者が事業を営むには、必要なお金を用意して、資産を購入し、従業員を雇わなければいけません。これらを「経営資源」といいます。つまり、経営資源とは、ヒト、モノ、カネのことです。
これらに加えて、販売する商品やサービスを作るためのノウハウや秘訣、すなわち技術が必要です。また、お客様を集めてきて商品やサービスを買ってもらわなければいけません。つまり、顧客関係を築くことが必要です。
事業とは、これらの経営資源が有機的に結合して、お金を稼ぐ仕組みです。現金製造機だと言ってもよいかもしれません。
そうすれば、事業承継には、事業を構成している経営資源をすべて存続させることが必要だと理解することができます。経営者が引退せずに働き続けることでも、後継者が見つかることでもありません。
経営資源のなかでも特に重要なものは、お客様との人間関係です。買ってくれるお客様がいなければ、事業は成り立たないからです。それゆえ、事業承継の際には、顧客リスト、顧客情報のデータベースを引き継ぐたけでなく、お客様の人間関係を引き継ぐことが重要だと言われます。
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急務となる「生産性向上」…実現には規模拡大が不可避
近年、情報通信技術の革新が急速に進み、AI・人工知能やロボットといった新しいデジタル技術を活用した経営効率化、生産性向上が求められています。これらのデジタル技術の導入は、中小企業にとって急務となっています。
しかし、多くの中小零細企業は、これらのデジタル技術を導入できるほどの資金力を持っていません。それゆえ、経営効率化と生産性向上を実現するには、事業規模を拡大して資金力を強化しなければいけないのです。
M&Aで可能性が広がる「雇用維持・生産性向上」
ここで簡単な例を考えてみましょう。
従業員10人の小規模企業が3社あり、それぞれ後継者に対する事業承継に成功するケースと、そのうち2社が廃業して、残りの1社に事業譲渡されるケースです。
3社が単独で生き残るケースと3社が1社に統合されるケース、どちらの事業のほうが大きく成長できるでしょうか。
3社が事業統合して、本社経費など間接コストの削減、広告宣伝費など営業コストの削減など経営効率化をおこなえば、資金を捻出することができます。その資金をデジタル技術への投資に充てることができれば、生産性が向上するはずです。
結果として会社の数は減少することになりますが、雇用の規模は減少しません。この例では30人が働き続けます。
逆に、生産性が向上します。わが国の中小企業に求められている事業承継は、このような方法ではないでしょうか。M&Aによって生産性を向上させることです。これが「事業承継型M&A」の効果です。
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後継者不在の問題について心配する必要はありません。そもそも日本に中小企業の数が多すぎたこと、社長の数が多すぎたことが問題だったのです。
これからの中小企業は、単独で存続を図るのではなく、事業承継型のM&Aを推進すべきなのです。
今回は、中小企業の生産性向上とM&Aについて解説いたしました。
岸田 康雄
国際公認投資アナリスト/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認会計士/税理士/中小企業診断士
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