“争族”の備えに有効な「生命保険金の活用」
今回の例においても、前述のように「妻が遺留分減殺請求を受ければ自宅を売却し、多額の現金を子どもたちに払っていかなければいけない」ということになりますが、「生命保険金の活用」をはじめとする生前対策を行うことで、これを防ぐことが可能です。
生命保険金というのは相続財産にはならないため、遺産分割の対象に含める必要がありません。
また、相続財産の価格を算定し、「どのくらいの遺留分減災請求が見込まれるか」を確認したうえでそれ相応の保険金をかけていけば、妻が遺留分減殺請求があった際に支払いに困ることはないわけです。
たしかに「配偶者居住権」「配偶者短期居住権」はありますが、安定した居住権のためには、こういった制度とは別に「生命保険金の活用」等を組み合わせるというのが1番有効な相続対策なのではないでしょうか。
まとめ…専門家だけでは「円滑な相続」は実現しない
円滑な相続を実現するためには、必ず遺言書の作成が必要です。しかし、その遺言書の内容というのは「相続人全員」に思いを馳せたものでなければ、実質的平等な相続の実現はできません。
万が一法的な権利を主張されたとしても、大切な人の生活や財産が守られるような相続を実現できるように、生前から自分の財産を考慮し、その対策を検討しておかなければなりません。そこまでやって、やっと「本当の相続」になるのではないでしょうか。
筆者も司法書士として数々の相続手続きを引き受けていますが、専門家として形式的な法的手続きや案内はできるものの、実際の「家族の問題」はそれだけで片づけることができません。
いろんな内情や感情があるなかで、どうすれば納得のいく相続ができるのかというと、やはり生前にそれぞれの事情を考慮した内容にしておくことが一番です。
円滑な相続の実現は専門家によるものではなく、みなさんが家庭の実情に応じてそれぞれ対策を取ることがなによりも大切です。
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加陽 麻里布
永田町司法書士事務所
代表司法書士
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