遺言書があっても…経営者の相続に立ちはだかる「壁」
経営者の相続というのは通常の相続と異なり、「財産を均等に分けるのは困難」といわれています。なぜなら、「事業を継ぐ子」と「それ以外の子」に財産を分ける必要があるためです。
たとえば、事業を行っていた父親の相続において、相続人として子どもが長男・長女・次女の3人いた場合を考えてみましょう。
父親が「事業は長男である息子に継いでもらいたい」願い、事業を継がせるため、長男が父親の財産のほとんどを相続するということを生前に家族間で取り決めたとします。さらに、生前対策として遺言書も作成していた場合であっても、いざ相続になると兄弟で揉めるケースが少なくありません。
どのような事情があっても、「相続人全員」に権利がある
長男に財産のほとんど(会社株式などを含めた財産)を相続させるとする遺言書を書いていたとしても、法的には長女・次女にも相続権があり、遺留分※も存在します。
※ 遺留分:一定の相続人に対して、遺言によっても奪うことのできない遺産の一定割合の留保分のこと。法律上確保された最低限度の財産をいう。
実際は長男が献身的に父親の面倒をみていて、「事業承継は長男以外考えられない」というような場面でも、長女や次女が「遺留分は現金でしっかり払ってね」と「遺留分減殺請求」をすると、長男は法律上保証された最低限度の財産を長女・次女に相続させなければなりません。
事業承継を行うと決めているのであれば、株式を相続人間で分けることはできないため、株価を算定し、現金で支払う必要があります。
長男は父親の家業を継ぐために父親の面倒をみたり、事業に積極的に携わったりしていたのですから、相続時になって他の兄弟から遺留分減殺請求を受けることに「納得がいかない」と考えるのも無理はありません。
また、先述のように、事業承継をするために株式を他の相続人と共有で持つわけにはいかないため、現金で支払う際に相続財産として現金があまりなかった場合、会社も長男自身も窮地に陥ってしまいます。
これは、慣れ親しんだ自宅を妻が相続したいにもかかわらず、他の相続人から「遺留分減殺請求」を受けてしまい現金がなく、自宅をやむを得ず売却しなければならない……という「配偶者居住権」の問題と類似します。
実際、生前どのような事情があったとしても、現行の民法上は、相続人が欠格者や特別受益者でない限りは、すべての相続人に遺留分を認めています。
では、どうすればよいのでしょうか。
《最新のDX動向・人気記事・セミナー情報をお届け!》
≫≫≫DXナビ メルマガ登録はこちら