(※写真はイメージです/PIXTA)

経営者の親が亡くなり、財産を相続する際には、通常の相続とは違い注意すべきポイントがいくつかあります。無対策のまま亡くなった場合、たとえ故人が生前に遺言書をのこしていても、兄弟間で修復不可能なトラブルに発展する場合も……。今回は、永田町司法書士事務所の加陽麻里布氏が、経営者の相続における問題点と対策について解説します。

事業承継には3種類…それぞれのメリット・デメリット

経営者の相続には、「事業承継」が絡んできます。スムーズな相続のためには、状況を鑑みて事業承継の方法を選択する必要があります。

 

事業承継には、主に以下の3つの方法があります。

 

1.相続による承継

2.生前贈与による承継

3.売買による承継

 

1.「相続」による承継

1つ目の「相続による承継」は、「現経営者(今回の例における「父親」)の死亡時に株式が承継される」というものです。これは承継者(長男)が用意する株式取得費用が比較的少なくて済むため、一見大変メリットがあるように思えます。しかし、デメリットも少なくありません。

 

まず、「遺留分減殺請求」を受けた場合に高額な支払いを現金でしなくてはいけないケースがあり、現金がない場合の相続において非常に苦しい結果になる恐れがあります。

 

また、遺言というのは遺言者がいつでも自由に撤回することができるため、事業承継においては非常に不安定といわれています。「父親が長男に承継させるという内容の遺言をのこした」と聞いていても、実際には後になって撤回されている可能性もありますので、「地位が安定しない」というデメリットがあります。

 

したがって、こうしたデメリットを考慮して「生前贈与による承継」を選ぶ方もいます。

 

2.「生前贈与」による承継

「生前贈与」というのは“契約”であるために、一方的な撤回は許されません。したがって、地位の安定を図ることができます。ただし、依然として遺留分の問題が残ります。

 

よって、選択肢に入れたいのが「売買による承継」です。

 

3.「売買」による承継

「売買による承継」のメリットは、相続による承継・生前贈与による承継とは異なり、「遺留分減殺請求」による不安定さから解放されるという点が挙げられます。また、早期に経営に参加することができ、「地位の安定」を図ることもできます。

 

デメリットとしては、「株式を購入する資金を生前に用意しておかなければいけない」という点が挙げられます。

 

したがって、まず「売買による承継」を考え、それができない場合には「相続による承継」「生前贈与による承継」のいずれかを選ぶ、という流れになろうかと思います。

 

このどちらかを選ぶのであれば、地位が安定するため「生前贈与」による売買をおすすめします。ただ、「遺留分減殺請求」の問題をどうやってクリアするのかということになりますが、これは生前に現経営者が、遺留分減殺請求を受けたとしても問題のない財産を残すことがポイントです。

 

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