SDGsへの取り組みを成功させる5つのステップ
SDGsに関心の高い多くの企業の方々とディスカッションをさせていただくが、「どのように始めていくのが効果的か」「今のやり方が正しいのか」「社員の関心度を高めるにはどうすればよいか」といったご質問を多くいただく。皆さんも同じ課題を抱えておられるのではないだろうか。企業がSDGsに取り組むにあたって有効なステップというものがある。このステップを理解し推進することがまずは必要となる。
「SDG Compass」というガイドラインをご存知だろうか。これはGRI、国連グローバル・コンパクト、持続可能な開発のための世界経済人会議 (WBCSD) によって開発されたガイドラインである。各企業の事業にSDGsがもたらす影響を解説するとともに、持続可能性を企業の戦略の中心に据えるためのツールと知識を提供するものである。ここからは、企業がSDGsへの貢献を最大化するための5つのステップに沿って具体的な取り組みと発揮すべきリーダーシップのポイントを紹介する。
ステップに沿って実践するために重要なリーダーシップ
【Step1 SDGsを理解する】
何事においてもそうだが、取り組む目的・意義を正しく理解することが成功のための第一歩となる。SDGsとは何かといった根本的な理解から始まり、世界中のすべての人が主役となるべきSDGsに企業として何のために関わるのか、どのように関わるべきか、またそのメリットは何かを正しく理解することから始めなければならない。
企業のトップから新入社員まで全員が理解する必要があるが、とりわけ企業のトップがその本質的な価値をしっかり理解し、ゆるぎない信念のもとSDGs経営への意思を固めることが企業としての取り組みの成否を分けるといっても過言ではない。
ここでの重要なリーダーシップは、リーダーの正しく熱い想いである。熱い想いが原動力となり、より大きな成果をもたらすのである。
具体的には、SDGsについての社内研修の実施や、ポスターや社内報などでの啓蒙活動などが挙げられる。研修においては、経営幹部向け、中堅管理職向けなどの階層別や管理系社員向け、製造系社員向けなど部門別で内容を変えて実施することをおすすめする。
【Step2 優先課題を決定する】
2番目のステップは、17のゴールと169のターゲットの中から、自社が優先的に取り組むべき課題は何かを明らかにすることである。すべての課題がすべての企業に等しく重要であるということは当然なく、戦略的に取り組むためにも優先課題を絞り込み、決定する必要がある。
戦略的に絞り込むための手法として、ここではバリューチェーンマッピングを紹介する。バリューチェーンとは「価値連鎖」と翻訳されるもので、主活動と支援活動に分かれており、顧客に価値をもたらすための企業の活動プロセスを表している。例えば、製造業の場合、購買→製造→物流→営業→サービス、といった活動プロセスを示すことが一般的である。
そのバリューチェーンのプロセスごとに、SDGsの課題に対して正の影響を与える活動は何か、負の影響を与える活動は何かを洗い出すのである。例えば、工場での製造工程においては温室効果ガス排出や産業廃棄物の排出といった負の影響が考えられる。一方、環境に配慮した調達や社会課題を解決する製品の製造といった正の影響も考えられる。
すべて洗い出したものを俯瞰して、インパクトの大きな項目に絞り込むと、ピントの合った優先課題が見えてくる。絞り込む際のスクリーニングのポイントは、社会貢献の大きさ、環境貢献の大きさ、経済価値の大きさ、自社のミッション・ビジョンとの整合性などを加味し、「ステークホルダーにとっての重要性」と「自社にとっての重要性」の2軸でそれぞれ高低に分けた4象限に整理するとよい。
ここでの重要なリーダーシップは、自社の活動を大きな視野で俯瞰した中で重要な優先課題を意思決定する決断力である。強みに絞る、自社らしい取り組みに絞ることがSDGsへ戦略的に取り組むということになる。