中小企業庁の方針により、中小企業にこそ落札のチャンスが
入札というキーワードから、「主に大手企業が対象となっているもの」というイメージをもっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。しかし実際には、大手ゼネコンなど老舗大企業ばかりに入札実績があるわけではありません。
その根拠として、国によって「中小企業向けの入札案件を増やす」という方針が定められていることが挙げられます。中小企業庁が毎年発表する「中小企業者に関する国等の契約の基本方針」では、官公需総額のうち中小企業・小規模事業者向け契約比率を上げていくことを主旨として年間の契約目標等が毎年更新されています。
令和4年度で見ると、中小企業・小規模事業者向けの契約目標は、比率61%・金額5兆2,738億円。この比率・金額は年々高まっており、こうした方針を背景として、入札市場への中小企業の参入はますます進んでいます(参考:官公需法制定時(昭和41年度)の実績比率は26%)。
さらに案件によっては個人事業主の方でも参入することができるなど、その門戸は広く開かれています。実際、創業5年以内の中小企業の約8割の企業が、入札に新規参入をしてから2年以内に成果を出していることを示すデータもあります(図表4)。
調査方法によって数値は異なりますが、中小企業庁が公表しているデータでは、創業した中小企業が5年後に残っている生存率は約40%とされています。例えば、起業してすぐに入札市場へ新規参入して2年以内に1,000万円の受注を受けることができれば、新企業の約5割が淘汰される約5年という1つの目途を超えることができ、生存を有利にすることができると言えます。
「建設・設備工事」案件が多い「入札市場」
では、入札市場ではどのような案件が公示されているのでしょうか。図表5は2023年2月に公示された案件を、業種カテゴリ別に分類したものです。
これを見ると、「建設・設備工事」の公示案件が最も多く、次いで「建物・道路・園地管理関連」「オフィス・事務用物品」と続いています。
次に、どの様な案件がいくらで落札されているかピックアップしてみましょう。図表6は、入札情報速報サービスNJSSにおけるIT関連企業が参入できる案件の落札情報の例です(落札結果もすべて公開情報)。
この結果を見ると、名の知れた官公庁や地方公共団体だけではなく、一般的にはなじみの薄い外郭団体(独立行政法人や第三セクタ―など)まで、幅広い機関より案件が民間企業に発注されていることが分かります。