(※写真はイメージです/PIXTA)

人生100年時代を迎え、日本においては「貯蓄から投資へ」シフトさせることを政府は推奨しています。投資から得られる所得、すなわち「資産所得(財産所得)」を増加させる「資産所得倍増計画」が掲げられています。そんななか、若年層や働く世代を中心に米国株投資が注目されています。本記事では、米国株投資をこれから始めようと考えている方にも分かりやすいよう、米国株を例に株投資の基本について、専門家であり東京大学経済学部で教鞭も執っている山内英貴氏が解説します。

「卵を一つのかごに盛るな」効果的なリスク抑制法

期待リターンを維持したまま、リスクを抑えるための手法として分散投資を効果的に行う手法が一般的です。

 

時間分散という考え方もありますが、あくまでも長期的に見てリスクが抑制されるという考え方であるため、今回、説明は割愛させていただきます。分散効果について、ここで詳しく触れたいと思います。

 

 

例えば、A資産とB資産の異なる2資産があり、それぞれ50%ずつ保有するポートフォリオと比較をしてみましょう。

 

図中の左側が1年ごとの年次リターンで右側が累積の運用成果です。3年間の最終的な運用成果を見ていただくとA資産とB資産はそれぞれ年率リターンが5%、標準偏差は1%ですが、50%ずつ保有したポートフォリオでは年率リターンは5%であるにもかかわらず、標準偏差は0.86%となっています。

 

これが分散効果です。

 

資産運用の世界では「卵を一つのかごに盛るな」という言葉で説明されます。分散投資とは、異なる値動きをする複数の資産に投資をすることで、各資産の価額の値動きが打ち消しあい、安定的な運用成果を目指すものです。

 

似たような値動きをする資産を組み合わせても分散効果は得られません。この際、どの資産同士を組み合わせればよいかを判断するための指標が相関係数です。相関係数は1からマイナス1の範囲で表され、相関係数がプラスであれば、プラス1に近づくほど資産どうしの連動性が強くなり、資産価額が同方向に動きます。

 

一方、相関関係がマイナスならば、逆方向に動きます。マイナス1は、全く逆の動きをします。相関係数が低い資産を組み合わせると、価額変動リスクを効率的に減らすことが期待できます。

分散投資で気をつけるべきポイント

前回の内容で米国株投資の際には米国株ETFを活用した分散をお勧めしましたが、米国株ETFは米国株内で産業セクター横断的に銘柄の分散が期待できる点も魅力の1つです(産業セクターを絞ったETFはこの限りではありません)。

 

銘柄やセクターによる分散から一歩踏み込み、さらにリスクを抑制させるためには株式以外の資産を組み合わせることが一般的です。いわゆるバランスファンドがこれにあたります。

 

バランスファンドは株式だけでなく、債券やREIT等の資産をバランスよく組み合わせることで、リスクの抑制を図ります。

 

ただ、リターンに対する期待値で考えると、企業のバランスシートにおける有事の際の弁済優先順位が最劣位の普通株式は最もリスクが高く、そのリスク・テイクの対価として最も高い累積リターンを期待することができる資産、と言えます。

 

それに対し、債券は弁済優先順位が高く、株式に比べて投資額が回収できるリスクが低いため、その対価であるリターンは低くなります。つまり、株式に対して債券を組み合わせることでリスクを抑制することは期待できますが、同時に期待リターンも下げる可能性が高いのです。

 

 

資産クラスの分散投資において、リターンを維持しながら、リスクを抑えるためには、同等程度のリターン水準をもつ、異なる値動きをする資産が必要になります。

 

例えば、前述のS&P500種指数のETFを活用する場合、期待リターンは8%程度であれば、リスク水準は同等もしくはそれ以下、かつ値動きの連動性が低い資産となります。

 

この場合、海外の大学基金等ではヘッジファンドやプライベートエクイティといったオルタナティブ資産と呼ばれる資産クラスを活用することが有名ですが、日本においては制度面等の問題も抱え、個人投資家の活用はまだまだ限定的です。

 

分散投資以外の手法でリスクを抑制したいという場合、ドローダウンの際、キャッシュに資産を退避させる手法があります。図で表すと下の通りです。

 

 

紫がドローダウンをそのまま経験した評価額、緑がドローダウンの際にキャッシュに資産を退避させた評価額です。大きなドローダウンという価額のブレを回避することでリスクの抑制を目指そうとするものです。

 

もっとも、この図は極端に上手くいった例であり、実際にはキャッシュ化のタイミングや買い戻すタイミングの見極めは容易でなく、見当違いであれば余計な取引コストを発生させ、リターン獲得の機会も逸してしまう可能性があります。

 

また、市場動向を常に見守りながら機動的に売買を行おうとすること自体が、私たちの限りある人生を織りなす「時間」という貴重な資源を奪うことになると考えると、個人投資家が自身で行う投資手法としては現実的な選択肢とするには無理がありそうです。

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