(※写真はイメージです/PIXTA)

これまで長年に渡り中国からの「再建支援」の名のもとによる多額の融資で債務返済に苦しみ、“債務のわな”に陥っているとして、欧米諸国を中心とした国際社会から懸念の声が多く上がっていたスリランカ…。スリランカの政治・経済・金融に関する情報を中心に取り扱う、スリランカ発ローカルメディア『EconomyNext』より、現地からの最新情報を翻訳・編集してお伝えする。

実態が不透明な「約32兆540億4,000万円」の融資

中国は2008年から2021年の間に、スリランカを含む発展途上国22ヵ国に対し、債務や国際収支の支援として、危機的状況にある国を救済するという名目で2,400億米ドル相当(約32兆540億4,000万円)の融資を行ってきた。これに対し、北京の「一帯一路構想」(BRI)の対象国を対象としており、さらに融資は高額で、その実態はあまり明らかになっていないと、4人の専門家が報告書で述べている。

 

北京の野心的な「一帯一路構想(BRI)」計画に協力するとされている主な22ヵ国に対して、北京はその中の特に窮地に陥っている国々に1,700億米ドル(約22兆5,999億7,000万円)以上、国際収支の支援として700億米ドル(約9兆3,490億9,500万円)を提供したと、世界銀行のセバスチャン・ホーン氏、ウィリアム・アンド・メアリー大学のAidData(同大学の研究およびイノベーションラボ)に所属するブラッドリー C. パークス氏、ハーバード・ケネディー・スクール(ハーバード大学の公共政策大学院)教授のカルメン M. ラインハート氏、キール世界経済研究所のクリストフ・トレビッシュ氏が報告書で語っている。

“債務の罠”の疑念が高まる中…

今回の報告書は、「中国が発展途上国の資産を所有する目的で、融資を“債務の罠”として利用している」という欧米の疑惑が高まるなか発表された。

 

「中国の救済融資は不透明であること、比較的高い金利を伴うこと、中国の一帯一路構想に関係する国にほぼ限定していることなど、国際社会における一般的な最後の貸し手(文字通り他に貸し手が居なくなったときに最後に貸す貸し手のこと)への融資とは異なる」と専門家は述べている。

 

「あまり周知されていないのは、直近、過去15年間に窮地に陥った国に対する中国の救済措置が大量かつ増加傾向にあることである。本論文は、中国政府が、『まだ文書化も研究もされていない、国際的な救済融資の新しいシステムを作り上げた』ことを示すものである」(専門家)

中国は「ほとんど人目に触れないよう行えることを実証した。」

中国国内では「一帯一路」や「OBOR」という名で知られる「一帯一路構想」とは、習近平主席が150以上の国や国際機関に投資するという野心的な計画を採用し、2013年にスタートした世界規模のインフラ整備戦略である。

 

専門家は報告書のなかで、さらに次のように記している。

 

「中国は、長年の海外融資ブームを受けて、国際的な危機管理者としての役割が近年飛躍的に高まっている。我々は、国境を越えた救済活動が制度化されず、不透明で断片的なものになるにつれ、国際金融システムの進化に大きな影響を与えることになると予想している。

 

また中国は、主要な債権国が、20ヵ国近い国々に対して国境を越えた救済融資の大規模なシステムを構築すると同時に、その救済活動をほとんど人目に触れないように行えることを実証した。」

 

さらに、調査の結果では、2016年から2021年の間に、パキスタン、アルゼンチン、モンゴルなどの中所得国で、救済資金のうちの80%が使用されたことが判明した。

 

また、中国の立場は、今日の国際金融通貨システムの中心である米国や国際通貨基金(IMF)に匹敵するには程遠く、中国による救済融資の有効性は十分に証明できていない。

 

加えて、「中国はソブリン債(国債や政府機関債など、各国政府や政府機関が発行する債券の総称)を低所得国に集中させている一方で、本格的な国際的救済活動は中所得国に集中している」と報告書は述べている。

この記事は、GGOが提携するスリランカのメディア『EconomyNext』が2023年3月30日に掲載した記事「1,000 tonne crane unloaded at Sri Lanka’s China backed port
」を翻訳・編集したものです。

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