安全確実なのは「公証証書遺言」
(2)必要書類とその後の手順
1,必要書類は、
- 遺言書(財産目録や通帳コピーはホッチキス止めはしない)
- 申請書(HPで取得する。遺言書のひな型も取得するとよい)
- 本籍と筆頭者の記載のある住民票の写し等・顔写真付きの免許書等の本人確認書類
2,郵送でも可能ですが、質問もしたければ、平日に予約して自筆証書遺言書を提出して本人確認や形式的な確認等をしてもらいます。
3,法務局は画像データを保管し、保管証を受け取る。ここまでが生前の作業です。
4,遺言した人が亡くなった後に、相続人らは、どこの法務局でもいいですから、行って遺言者が保管の有無を調べ、確認したら遺言書の写しをもらいます。
5,すると法務局は他の相続人等に遺言書を保管している旨の通知をします。
6,先に書いたように市役所での死亡通知により自動的に連絡もされます。
7,他の相続人等は、その通知で、各自が法務局に行き、写しをもらいます。
(3)「家族信託」した場合の「自筆証書遺言」の書き方
「自筆証書遺言」は、縦書き・横書きどちらでも結構です。
下の図1がそのポイントです。パソコンで下書きをしたあと、必ず手書きします。まずは、信託した財産について書き、その他の財産についても書きます。
財産が多いとか、複雑なときは、図3のように、訂正ができるよう、財産目録を別にしてパソコンで書くことが認められました。通帳や登記簿謄本のコピーでもOKです。これで極端にいえば毎年の書き直しも容易になりました。
その他、いくら「仲良し家族」といえども注意すべきことがいくつかあります。その配慮をするかしないかで、「仲良し家族」が維持できるか、不満を残したり、余計な波風が立ったり、心配事が後から生じたりと、問題は尽きませんが、残念ながらここでは全部をお話しすることはできません。
「家族信託契約書」は10ページほどにわたるほど複雑ですから、認知症になっていると作成はほとんど困難です。
それに比べ、「遺言書」は簡単ですので、初期の認知症と診断された後でも大丈夫です。最も急ぐ「家族信託」は終えたので安心です。また、費用は3,900円ですから、まずはやってみて、再度書き直してみるのもいいでしょう。
もちろん「公証証書遺言」が安全確実に決まっています。費用が許せば、ぜひそうしたいものです。
(4)節税よりも大切なことは、遺産分割でもめないこと(遺留分への配慮)
遺産分割のポイントは、節税ではなく、遺産分割をめぐってもめないことです。
上の見本のように、その他の財産は、妻に相続させれば、あくまで我が家のケースでは、子どもたちが文句を言うことはありません。
しかし、先ほどお話しした遺留分の配慮は欠かせません。万一、相続人である子どもたちが、最低相続分である「遺留分」を主張してきそうならと考えました。「代案1」のように、遺留分は相続させて、残りは妻へとし、もっと欲しそうなら(笑)、「代案2」のように、とどんどん細かくなります。
さらに、「何分の1を相続する」では具体的な財産がどれなのかわかりません。個別の財産名を記して相続や相続人以外の者に遺贈したいなら、通常は、その旨を別紙の財産目録にパソコンで作成して、家族信託した財産と同様に「別紙〇の〇〇を相続する」と特定することでもめなくなりますのでお勧めです。
特定すると、財産が増えたときに、それは誰が相続するのかが問題になるので、2のように「その他の財産は」で手当できるようにしておくことです。
もめないようにする逃げ道は、通常は「法定相続分」です。つまり、配偶者と子どもが相続人であるときは、配偶者は2分の1、子どもも2分の1で、その子どもが複数なら、それを頭数で当分するという〝あれ〟です。「法律に基づいているから仕方がないかぁ」との納得性です。
しかし、それではやはり、特別に思いを込めて、特定の相続人には、多く相続させたいというのも気持ちとしてはあるものです。