(※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。

 

●市場では少数派ながら、来週の会合でYCCの変動幅再拡大というサプライズを見込む向きもある。

●日銀は変動幅拡大の効果を見守る状況にあるが2月債券市場調査は前回調査から大きく悪化。

●ただ、変動幅再拡大は黒田総裁の見解や期末という時期も踏まえると難しく、今回も現状維持か。

市場では少数派ながら、来週の会合でYCCの変動幅再拡大というサプライズを見込む向きもある

日銀は3月9日、10日に金融政策決定会合を開催します。なお、雨宮正佳副総裁と若田部昌澄副総裁は3月19日、黒田東彦総裁は4月8日に、それぞれ任期満了を迎えるため、今回は現総裁・副総裁の体制下で最後の会合となります。市場では、現状維持を予想する向きが大半ですが、黒田総裁が最後にサプライズを起こすのではないかとの声も一部に聞かれます。

 

日銀は昨年12月20日、イールドカーブ・コントロール(YCC)における10年国債利回りの許容変動幅を、上下0.25%から0.5%へ拡大することを突然決定しました。債券市場の機能低下に対処するためのものでしたが、依然として利回り曲線のゆがみは解消されていません(図表1)。そのため、市場では少数派ながら、黒田総裁が3月の会合で変動幅の再拡大に踏み切る可能性を指摘する向きもあります。

 

[図表1]日本国債のイールドカーブ(利回り曲線)

日銀は変動幅拡大の効果を見守る状況にあるが2月債券市場調査は前回調査から大きく悪化

なお、黒田総裁は1月18日、金融政策決定会合後の記者会見で、「(変動幅拡大の)影響を評価するには時間がかかる」との見解を示しました。また、同会合の主な意見(1月26日公表)でも、「前回会合で決定したイールドカーブ・コントロールの運用の見直しが市場機能に及ぼす効果については、いましばらく時間をかけて見極める必要がある」との指摘があり、日銀は現在、変動幅拡大の効果を見守っている状況にあると推測されます。

 

こうしたなか、日銀は3月1日、債券市場サーベイを公表しました。今回の2月調査は、2月1日~7日の期間、大手機関投資家など70社からの回答をまとめたもので、変動幅拡大後の市場機能の変化をみる上で注目されていました。結果は図表2の通りで、債券市場の機能度判断指数はマイナス64と、前回の昨年11月調査から13ポイント悪化し、2015年2月の調査開始以来、最低の水準となりました。

 

[図表2]債券市場の機能度判断指数

ただ、変動幅再拡大は黒田総裁の見解や期末という時期も踏まえると難しく、今回も現状維持か

この結果をみる限り、昨年12月の変動幅拡大後も、債券市場の機能は総じて悪化していることから、3月の会合で変動幅の再拡大を予想する向きには支援材料になったと思われます。ただ、前述の通り、黒田総裁も、主な意見における指摘でも、効果の判断には「時間がかかる」と明言しており、2月上旬の調査結果をもって早々に変動幅再拡大を決定する公算は小さいと考えます。

 

黒田総裁は2013年3月20日に日銀総裁に就任後、量的・質的金融緩和など、異次元緩和を強力に推進してきました。最後の会合で変動幅再拡大となれば、これまでの緩和方針を修正することにもなりかねず、また、年度末ということもあり、サプライズで長期金利が上昇すれば、金融機関の決算への影響も懸念されます。そのため、黒田総裁は最後まで金融緩和継続の姿勢を崩さないのではないかとみています。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『黒田日銀「最後のサプライズ」はあるか…2023年3月「日銀金融政策決定会合」プレビュー【ストラテジストが解説】』を参照)。

 

市川 雅浩

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフマーケットストラテジスト

 

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