0(ゼロ)からビジネスを始めるしかなかった
私が移住を決めたとき、ドバイには日本人が2000人しかいませんでした。シンガポールに住む日本人は3万人だったし、周りを見回してもアジア人ばかりだったので、生活も東京とさほど変わらず非常に住みやすかったのですが、ドバイは何もかもがアジアとは違いました。
すでにドバイに移住していた金融系、不動産系の友人の助けで、私はドバイで新たにビジネスを開始しました。コロナ騒ぎが長引き、海外を行ったり来たりすることが難しくなった結果、世の中もリモートワークが当たり前になりビジネスの世界もガラリと変化しつつあった時期のことですが、私は元々インターネットを使ってビジネスの基盤を作っていたため、場所や時間に左右されず、お金を生み出すことができました。
とはいえ、今まで持っていた銀行口座も暗号通貨もSIMなしでは動かせず、ないのと同じという状況です。いうなればまったくの0から、お金を稼ぎ出さなければならない状況でした。そんな中で臨機応変に手助けしてくれたのは、とあるプライベートバンクでした。
なぜ富裕層はドバイに集まるのか
■コロナ禍でも格段に自由、暮らしやすい
今、ドバイにお金持ちが増えています。それはなぜでしょうか。その理由は、ドバイがとても自由で暮らしやすく、ビジネスがしやすい土壌が整っているからです。
私がドバイに移住した時期は、世界中がストレスフルな状況でした。渡航は困難で、海外から入国自体ができない国が多く、入国できたとしてもPCR検査のみならず入出国の度に14日間のホテル隔離が必要でした。しかしこの当時からドバイでは、PCRの陰性証明さえあれば隔離は必要なく、他の国と比べて格段に自由でしたし、合理的でした。
世界中がロックダウンなどで不自由な暮らしを強いられている中、ドバイでは不便なことはまったくありませんでした。2020年10月に開催する予定だったエキスポが2021年10月に1年延期され、マスク必須となったということ以外は以前の生活となんら変わらなかったのです。
だからこそ、私と同じようなタイミングで、香港やシンガポールに移住していたビジネス仲間たちがそれらの国から引き上げて、続々とドバイに移住してくるようになりました。
■所得税なし…圧倒的ビジネスのしやすさ
これは暮らしやすさだけではなく、ドバイでのビジネスのしやすさも関係しています。なんと、ドバイには所得税がありません。かかるのは2018年からはじまった消費税の5%だけ。2023年からは法人税がはじまりますが、個人の所得税は無税です。
そして、観光が主な収入源であるドバイでは、外国人が訪問・滞在しやすい環境づくりを積極的に進めています。2020年には、職業からリタイアしても引き続き5年間の居住許可を得られる「リタイア・イン・ドバイプログラム」や、ドバイに住みながら外国企業での在宅勤務を可能にする「バーチャル・ワーク・プログラム」をはじめました。
ドバイだけでなくUAE全体でも、2021年から「リモートワークビザ」と「マルチ観光ビザ」を導入しています。これらの施策により、外国人である私たちがコロナ禍であってもドバイまたはUAEに入りやすく、活動もしやすくなっています。2021年秋には、ドバイ世界貿易センター(DWTC)が、デジタル資産、関連事業者、取引所など仮想通貨を包括的に扱う特区になると発表もされ、暗号通貨系の起業家たちが続々と移住してきました。そしてロシアとウクライナの戦争開始以降は、ロシアの富豪たちも続々とドバイに集まってきています。
このような背景があり、ここ1〜2年でドバイの不動産は20%ほどの上昇を見せており、2021年の不動産価格上昇ランキングは、堂々の世界第一位でした。2021年といえばコロナ禍の真っ盛り。そんな中で不動産価格が上昇している勢いのある国、それがアラブ首長国連邦なのです(ドバイはアラブ首長国連邦の一つの州。日本でいうならば、関東みたいなものです)。
ドバイはお金持ちが活動しやすい国であることは間違いなく、これからもお金持ちが集まってくることが予測されます。コロナ禍の最中、ドバイに住む日本人の数も2000人から5000人に増えました。
高嶋 美里
遊雅セレブリティ株式会社 代表取締役