専門家が依然として少ない
家族信託は2006年の信託法改正で創設され、翌2007年に施行された制度です。そのため、法改正してからそこまで長い期間経っておらず、裁判例の積み重ねが少ない、まだまだ歴史の浅い制度といえます。
弁護士や司法書士、行政書士等の士業専門家だけではなく、民間の資産運用会社も家族信託のコンサルティングを行っている場合があります。家族信託を検討している場合は、相続、特に家族信託の専門家へ事前に相談した方が無難です。
しかし、家族信託を実際にコンサルティングした事務所・民間会社はあまり多くありません。相談したい場合は、相続の専門家からの紹介を受けたり、専門家(会社)が開設しているホームページを閲覧などして調べたりする必要があります。
そして、家族信託の実績が十分あるか、事例や経験が豊富にあるか等を確認してから問い合わせをしましょう。
信頼して管理を任せる親族等が必要
信託の本質は、信頼関係です。自らの財産を信頼して任せられる親族がいない場合は、そもそも家族信託を設定することができません。
お子様がいらっしゃらないご夫婦やお一人様の場合は、任意後見を含む成年後見制度を検討する必要があります。
家族信託にかかる費用は? 税金がかかる可能性がある点に注意
家族信託は委託者と受託者の契約で成立します。まずは契約成立までの手順をみてみましょう。
1.信託契約の決定と契約締結:委託者が信託対象となる財産の範囲・管理方法・受益者が誰か等を取り決め、受託者の合意の下で締結
2.信託用口座の開設:信託財産(預金・賃貸収入等)で利益を得る際に利用
3.信託登記:信託財産に不動産がある場合、名義を委託者から受託者に変更
4.運用の開始:受託者の財産管理を開始
一見すると、家族信託では費用があまりかからないと感じます。しかし、信託契約内容のより確実で誠実な運用を目指す場合や専門家からの有益なアドバイスを得たい場合には、信託財産の種類によって次の費用がかかります。
・信託契約書を公正証書にする場合:手数料3~10万円程度。契約書原本は公証役場で保管されるので、紛失や内容の改ざんを防止できる。
・コンサルタントに依頼する場合:外部の専門家にコンサルティングを依頼した場合、信託財産1億円以下の部分で1%、受益者連続型の場合は1.5倍程の報酬が相場。
・信託財産に不動産がある場合:固定資産税評価額の0.4%の登録免許税(土地信託の場合:固定資産税評価額の0.3%)
ただし、先述したように、家族信託にかかる費用は、単発で一度切りの場合がほとんどで、成年後見制度のように、継続的な費用はかからないです。
家族信託を利用した方が良いケースや家族信託に向いている人とは
家族信託にはメリット・デメリットの双方があります。その特徴を踏まえ、次のご家庭に向いている制度といえます。
高齢になった親が所有する不動産を管理したいケース
日本では長寿化が進展している一方、認知症をはじめとした病気のリスクが高まっています。親と子が離れて暮らしている場合は、所有する不動産の管理、相続対策に不安を感じるケースも多いことでしょう。
そこで委託者(親)が元気なうちに、より希望にそった形で不動産資産等を管理・処分してもらいたいならば、子を受託者として家族信託を活用するのが有効な方法です。