(※写真はイメージです/PIXTA)

「家族信託」という制度をご存知ですか? 相続における認知症対策としてとても有効な制度と知られており、良い面が見られることが多いようですが、実際のところはどうなのでしょうか──。後藤光氏が代表を務める株式会社サステナブルスタイルが運営する、相続・終活に関する情報を発信するwebサイト『円満相続ラボ』の中から、相続対策専門司法書士である向田恭平氏が監修した記事を、一部抜粋・編集してお届けします。

家族信託のデメリットと注意点は?

家族信託は柔軟な財産管理のための契約を結べる反面、次のようなデメリットも存在します。

 

損益通算ができない

信託財産に収益不動産(マンションやアパート経営)があり、信託財産から不動産所得にかかる損失が生じた場合、その損失を利益から控除するようなことができません。

 

つまり、信託財産たる不動産に関係した損失は、信託財産以外からの所得と損益通算(利益と損失を合算し申告利益を少なくできる制度)や純損失の繰り越しは不可能です。

 

その他、信託契約を複数に分け、それぞれの信託契約をまたいだ損益通算も認められません。

 

ただし、信託財産の損失についてのデメリットはあるものの、信託財産から生じる利益と個人の損失が出た分の損益通算はすることが可能です。

 

したがって、大規模修繕や損が出そうな不動産を含めてどのような不動産を信託財産に入れるかは専門家と相談し、慎重に検討する必要があります。

 

家族信託を締結すること自体には基本的には税務メリットがなく、節税対策を検討するならば、不動産の売却や、買い替え、賃貸建物を建設する等、別の措置を講じておくべきです。

 

身上監護は入っていない

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

財産管理に関しては柔軟な内容を設定できる家族信託ですが、判断能力のなくなった委託者に代わり、入院手続きや住居の確保や介護契約等について代理で手続きができる「身上監護」をする権利は認められていません。

 

つまり、受託者は、委託者や受益者のために医療機関への入院手続きや、介護施設入所手続きを行うことは不可能です。

 

そのため、身上監護を検討するならば家族信託の他に、身上監護の権利も認められている成年後見制度を併用する必要があります。

 

財産管理がずさんになるリスクもある

家族信託の受託者は、委託者の財産を適切に管理・処分でき、かつ信頼できる家族を選びます。家族が受託者に就任するため、基本的に報酬は不要です。

 

しかし、委託者から信任されたにもかかわらず、その財産管理をまともに行わない等のケースも想定されます。

 

委託者はもちろん、他の相続人の中から不満の声が上がり、受託者とトラブルになるおそれもあります。受託者に適任な信頼できる家族や親族がいない場合には、無理に家族信託を進めるべきではありません。

 

受益権で揉める可能性がある

家族信託は、財産管理に関する取り決めの自由度が高いものの、完全に自由に委託者が信託契約内容を決めてしまうと、他の家族との間でトラブルが発生するリスクもあります。

 

例えば信託契約で委託者の全財産に関して、委託者が亡くなった後の二次受益者を妻にしたら、他の家族は不公平に感じるかもしれません。

 

後々、受益者を誰にしたかで揉めそうな場合、受益者を家族複数人に設定したり、バランスを取った受益権を設定することも検討してみましょう。

 

長期間にわたり家族を拘束

家族信託では、委託者を受益者とできる他、一次財産承継者(二次受益者)だけでなく、それ以降の財産承継者を受益者と設定することも可能です。

 

その反面、何世代にもまたがり、長期にわたり財産管理や処分に制限をかける事態となり、家族間での混乱や財産をめぐる争いが誘発されるおそれもあります。

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※本記事は、株式会社サステナブルスタイルが運営する相続・終活に関する情報を発信するwebサイト『円満相続ラボ』より転載したものです。

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