(※写真はイメージです/PIXTA)

多くの人が、60代以降の老後の生活について、様々な不安を抱えています。「円安」「インフレ」が顕著な今日ではなおさらです。本記事では、60歳を前に「自主定年退職」した元・大学教授で会計学博士の榊原正幸氏が、著書『60代を自由に生きるための誰も教えてくれなかった「お金と仕事」の話』(PHPビジネス新書)から、快適な老後を迎えるための「お金」と「仕事」への向き合い方について解説します。

「FIRE」が抱える大きな問題

早期退職は経済的な基盤があってこそです。

 

こういう話をすると「とっととお金を貯めて、あとは働かずに一生暮らす」という生き方がベストなのではないかと考える人もいると思います。いわゆる「FIRE」です。

 

30代や40代、早い人は20代で働くのをやめて遊んで暮らす生き方が、人々の羨望を集めています。ただ、私は「一生遊んで暮らすような人生が楽しいわけがない」と考えています。

 

そこで、ここでは「FIRE」の問題点をいくつか指摘していきます。

 

「FIRE」には何種類かのタイプがある、というのを最近テレビで観た覚えがあるので、この項を書くために、「FIRE 種類」のキーワードでググってみました。そうしたら、FIREには4種類のタイプがある、ということがわかりました。

 

[図表1]4種類の「FIRE」

 

それぞれ、簡潔に説明します。

 

まず、「フルFIRE」は、一切働かないタイプで、「サイドFIRE」は、フルタイムの本業は辞めて、アルバイトなどのパートタイムで気楽に働きながら、運用収入と労働収入で、気ままに生きていくタイプです。

 

◆1.ファットFIRE

資産家や超富裕層で、一切働かなくても、まったく節約もしなくてすむタイプ。これは一握りの例外の人しかできませんから、ここでは議論しません(なお、「ファット(fat)」とは「太っちょ」という意味です)。

 

◆2. リーンFIRE

節約して貯めたなけなしの資金を運用して、FIRE後も一生節約して生活するタイプ。一切働かないが、一生貧乏。これが、一番問題が多いタイプです。

 

「リーン(lean)」とは「無駄がない」とか「際の(キワッキワの)」という意味です。ギリギリの生活をすることを要求されるため、こういった名称なのだろうと私は解釈しています。

 

◆3. バリスタFIRE

30代などの若い時にFIREをして、そのあとはアルバイトなどで気楽に働きながら、運用収入と労働収入で、気ままに生きていくタイプです。「バリスタ(barista)」とはイタリア語で、「コーヒーを煎れる人」のことです。

 

このタイプの人は喫茶店で、パートタイムで気楽に働くことが多いので、こういった名称になったようです。

 

アメリカではスターバックスコーヒーが、アルバイト店員さんにも社会保障などの適用をしているらしく、それがバリスタFIREに向いているので、こういった名称になったという説もあるようです。

 

◆4. コーストFIRE

たとえば30歳くらいから運用を開始し、50歳くらいまでは働きながら、20年かけて十分な資産を形成して、50歳くらいでFIREをするタイプです。「コースト(coast)」とは「滑らかに進んでいく様子」を表す言葉です。

 

「バリスタFIRE」よりも歳を取ってからのFIREですが、所有資産が多く、経済的な余裕があるタイプです。

 

私は「FIRA60(Financial Independence: Retire Around60)」という考え方を提唱しています。

 

これは、60歳前後までに投資や副業で十分な資産を手にして、60歳前後で「自主的に定年退職」することを目指すというものですが、これはまさにこの「コーストFIRE」に近い発想です。

次ページ一番ダメなのは「リーンFIRE」
60代を自由に生きるための誰も教えてくれなかった「お金と仕事」の話

60代を自由に生きるための誰も教えてくれなかった「お金と仕事」の話

榊原 正幸

PHP研究所

「老後の資金が足りるか心配」 「定年後もお金のためにイヤな仕事を続けなくてはならないの?」 「仕事を辞めた後、自分の居場所ってあるんだろうか……」 そんな悩みをまとめて一刀両断! 「お金の不安もなく、好きなこと…

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