多くの人が、60代以降の老後の生活について、様々な不安を抱えています。「円安」「インフレ」が顕著な今日ではなおさらです。本記事では、60歳を前に「自主定年退職」した元・大学教授で会計学博士の榊原正幸氏が、著書『60代を自由に生きるための誰も教えてくれなかった「お金と仕事」の話』(PHPビジネス新書)から、快適な老後を迎えるための「お金」と「仕事」への向き合い方について解説します。
一番ダメなのは「リーンFIRE」
先に述べた4種類のFIREのタイプの中で、私が問題提起をしたいのは、「リーンFIRE」についてです。4種類のFIREについて、ひと言でまとめると次のようになります。
なぜ「リーンFIRE」が問題なのかというと、その多くは、早く仕事を辞めたいがために、数千万円程度とかそれ以下の資金しか準備せずに、とっとと仕事を辞めてしまうからです。
数千万円は確かに大金ですが、それだけで「残りの長い人生」を過ごすには不十分と言わざるを得ません。また、なんらかの理由で大きなお金が必要になった場合、途中でお金が足りなくなってしまう可能性があります。
さらにいえば、せっかく貧乏な生活を我慢して数千万円(とかそれ以下)の資金を貯めてFIREを達成したのに、その後もずっと節約生活を過ごさなくてはならないわけです。そんな人生が果たして、楽しいでしょうか。
だったら、「イヤじゃない仕事」に就くことで働き続け、より多くのお金を稼ぐほうがよほどいいと思うのですが、いかがでしょうか。
すなわち、私が提案するのは「コーストFIRE」に近いものです。これなら、本業を退職したあともお金の心配をあまりせず、気ままに働くことができます。
榊原 正幸
元大学教授
会計学博士・税理士
元・大学教授
会計学博士
税理士
1961年、名古屋市生まれ。名古屋大学経済学部、大学院経済学研究科を経て、同大学経済学部助手。1993年、日本学術振興会特別研究員(PD)となり、その後、渡英して英国レディング大学に入学。帰国後の1997年より東北大学経済学部助教授。2000年、日税研究賞を受賞。2001年、英国レディング大学より博士号(PhD)を授与される。同年、税理士資格を取得。2003年、東北大学大学院経済学研究科教授。2004年4月、青山学院大学大学院国際マネジメント研究科教授。2021年3月に退任し、東京・青山を拠点にしてファイナンシャル教育の普及活動を続けている。会計学博士。シリーズ10万部突破の『株式投資「必勝」ゼミ』(PHP研究所)の他、『60歳までに「お金の自由」を手に入れる!』(PHPビジネス新書)、『会計の得する知識と株式投資の必勝法』(税務経理協会)など、著書多数。
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連載60代を自由に生きるための 誰も教えてくれなかった「お金と仕事」の話