投資信託の分配金コースには、「受取型」と「再投資型」があります。メリット・デメリットを比較し、どっちのほうがおすすめかを解説します。また、「つみたてNISA」で分配金コースを選ぶ際の注意点や、楽天証券でのコース変更の方法などについて、FP資格を持つ証券会社出身のSGO編集者が解説します。
楽天証券の「分配金コース」はつみたてNISAではどっちがおすすめ?「受取型」と「再投資型」を比較

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投資信託の分配金コースには、「受取型」と「再投資型」の2種類があります。

 

本記事では、投資信託の分配金コースについて、

 

「受取型と再投資型の違いは?」

「どっちがおすすめ?」

「つみたてNISAでも考え方は同じ?」

 

という疑問をお持ちの方に、「受取型」と「再投資型」のメリット・デメリットを比較し、どっちを選ぶべきかについて、楽天証券のケースを想定して解説します。

 

結論を先にお伝えすると「再投資型」のほうがおすすめなのですが、最後まで読むことで、その理由がわかります。

 

 

1. 投資信託の「分配金」とは

投資信託の「分配金」とは
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

「分配金(=収益分配金)」とは、投資信託の運用によって得られた収益を投資家に分配するお金のことです。株式でいうと、企業から支払われる配当金のようなものです。

 

分配金の支払い頻度は、年1回、年2回、毎月など銘柄によって様々です。

 

また、分配金が出ない投資信託も多数ありますが、「なし」だからといって運用が上手くいっていないわけではありません。運用で得た収益を再投資に回しているだけで、つみたてNISAの銘柄に指定される資産形成を目的にした投資信託は、基準価額(投資信託の価格のこと)が上昇するように、あえて出していないケースも多々あります。

 

この分配金は、投資信託の運用収益から支払われていると思われがちですが、次の図のように、投資信託の「純資産」から支払われています。

 

投資信託の分配金のイメージ図
■分配金のイメージ図

 

基準価額の計算式は「基準価額=純資産÷口数」で表せるので、投資信託の保有者の口数(くちすう)が変わらなければ、分配金を出して純資産が減れば、運用が上手くいっていても基準価額は必然的に下落してしまいます。

 

厳密にいうと、分配金には「①普通分配金」と「②特別分配金」の2種類があります。①普通分配金は、投資信託の運用益から支払われる分配金のこと。②特別分配金は、元本を取り崩して支払われる分配金のことです。

 

今でも根強い人気がある「毎月分配型」の投資信託は、運用成績が優れているから毎月分配金を出せるわけではなく、自分が積み立てた金額の一部が戻ってきているだけであることを知っておきましょう。

 

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2. 投資信託の2つの「分配金コース」…メリット・デメリットを比較

投資信託の2つの「分配金コース」…メリット・デメリットを比較
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

分配金が出る投資信託には、分配金の取り扱いに関して「受取型」と「再投資型」の2つのコースがあり、購入者は買付時に選ぶことができます。

2.1.「受取型」は分配金を現金で受け取るコース

受取型は、分配金を総合口座に振り込んでもらう形で受け取るコースです。

 

2.2.「再投資型」は分配金で同じ銘柄を追加購入するコース

再投資型は、分配金を受け取らず、投資信託の決算日に基準価額で同じ銘柄を追加で購入して再投資するコースです。

 

なお、運用会社の方針で投資信託の運用益を再投資している場合は「再投資型」とは言いません。あくまでも、「分配金を出しますが、受け取りますか? それとも再投資しますか?」と購入者に選べる権利がある場合に限ります。

 

2.3.「受取型」と「再投資型」のメリット・デメリットを比較

受取型と再投資型のメリットとデメリットを比較したのが、以下の表です。

 

  メリット デメリット
受取型 ・すぐにお金がもらえる

・複利効果が期待できない
・基準価額が下落する要因になる
・受け取るたびに約20%の税金がかかる

再投資型 ・複利効果が期待できる ・投資をしている実感がない

 

補足すると、受取型では定期的にお金が入ってくるので、得した気分になります。ただし、分配金を再投資することでまたお金を生む「複利効果」は期待できないうえ、基準価額が下がって評価損が出る可能性もある点には注意が必要です(「複利」の反対の「単利」は、元本しか投資しない)。

 

複利と単利の説明のイメージ図
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

また、受取型は分配金を受け取るたびに約20%の税金がかかるので、せっかくの分配金が目減りしてしまいます。

 

一方、再投資型であれば、分配金がまたお金を稼いでくれる複利効果が期待できるうえ、分配金を出すことによる基準価額の下落の心配もありません。

 

そのため、投資信託で資産形成をすることが目的であれば、分配金コースは「再投資型」を選んでおいたほうが、売却したときの利益を最大化できる可能性があります。

 

「受取型」を選ぶ場合は、分配金を出しても純資産の目減り分を上回る運用成績をあげる可能性がある投資信託でないと、基準価額の上昇は期待できません。

 

「本当にそうなの?」

 

と思われた方のために、毎月20円の分配金を出している、「ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(毎月分配型)」の設定来のチャートをご覧ください。青が基準価額のチャートで、オレンジ色が分配金を出さなかった場合の「基準価額+分配金」のチャートです。

 

「ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(毎月分配型)」のチャート
■「ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(毎月分配型)」のチャート (出典:楽天証券

 

上のチャートを見ると、青色の準価額はダラダラと下落している一方、オレンジ色の「基準価額+分配金」は上昇していることがわかります。

 

つまり、分配金を出さなければ、一時的な下落はあるものの、上昇トレンドのチャートを描けたことがわかります。

 

言い換えると、分配金が出る投資信託で値上がり益(キャピタルゲイン)を狙うには、分配金を出すことによる下落分を上回る基準価額の上昇が必要です。しかし、分配金を頻繁に受け取り、右肩上がりのチャートで値上がり益も狙えるよう投資信託は探すのは非常に困難です。

 

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3. つみたてNISAで分配金を受け取るときの注意点

積立nisaで分配金を受け取るときの注意点
(※写真はイメージです/PIXTA)


投資信託の分配金コースは、基本的には「再投資型」のほうがおすすめとお伝えしました。それでは、つみたてNISAでも考え方は同じでしょうか?

 

見ていきましょう。

 

3.1. 基本的には「再投資型」がおすすめだが…

つみたてNISAは「長期・積立・分散投資」による資産形成を目的としているので、分配金コースは「再投資型」のほうがおすすめです。しかし、つみたてNISAの銘柄は分配金が出ない銘柄ばかりなので、「受取型」と「再投資型」のどっちにすべきかを議論する意味が実はありません。

 

ネットを見ると、『つみたてNISAで「再投資型」を選び、年間40万円の非課税投資枠をフルに使って積立設定をすると、途中で分配金が再投資された場合は12月に積立設定ができない。だから「受取型」にしておくべきだ。』という意見が散見されます。

 

はたして、どういうことでしょうか?

 

 

3.2. 金融庁のHPでは分配金が出ることに含み

上記のような意見が出るのは当然のことで、金融庁の『つみたてNISAの概要』の「投資対象商品」の項目を見ると、選定するつみたてNISAの銘柄の基準として「分配頻度が毎月でないこと」と書かれているのみです。つまり、分配金が年1回や2回などの数回であればOKという解釈ができます。

 

金融庁による積立nisaの説明
■つみたてNISAの概要 (出典:金融庁

 

しかし実際は、次の「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」のようなつみたてNISAで金融庁からお墨付きを与えられた銘柄は分配金が出ないものばかりです。

 

「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」の分配金の推移
■「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」の分配金の推移 (出典:楽天証券

 

また、「eMAXIS Slim全米株式(S&P500)」の目論見書(投資信託の説明書のようなもの)の「収益分配」の項目を見ると、次のように書かれています。

 

『年1回の決算時に分配金額を決定します。(分配金額の決定にあたっては、信託財産の成長を優先し、原則として分配を抑制する方針とします。)販売会社との契約によっては、収益分配金の再投資が可能です。』
(出典:「eMAXIS Slim全米株式(S&P500)」目論見書)

 

要約すると、「基準価額の上昇を優先させるため、分配金は出さずに再投資します。けど、契約次第では運用収益から出すことも可能です」と読み取ることができます。

 

つまり、将来的に分配金を出す可能性があることを含んだ書き方となっています。

 

 

3.3. 分配金が出る可能性があっても「再投資型」がベター

筆者の意見としては、つみたてNISAの銘柄が分配金を出す可能性があっても、出るときに備えて年間の非課税枠に収まるように「受取型」を選んでおくよりも、最初から「再投資型」を選んで基準価額の上昇を狙うスタンスのほうがおすすめです。

 

なぜなら、分配金が出ることになって12月の積立額が年間に非課税限度額をオーバーしても、楽天証券の場合は課税口座である総合口座で積み立てが実行されるからです。また、楽天証券のつみたてNISAでは、すでに保有している分の投資信託に関しては、分配金コースを変更することができません(次回積立分からコース変更することは可能)。

 

そもそも、運用方針を転換して分配金を出すような投資信託は基準価額が下落する可能性もあるので、ポートフォリオ(銘柄の組み合わせ)の見直しを検討したほうがいいかもしれません。

 

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4. 楽天証券の「分配金コース」の変更方法

楽天証券で分配金コースを変更する方法
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

繰り返しになりますが、楽天証券のつみたてNISA口座では、すでに保有している分の投資信託に関しては分配金のコース変更ができません。しかし、総合口座で購入した投資信託に関しては、過去分も含めて分配金コースの変更が可能です。

 

現在、楽天証券で「受取型」で投信積立をしている人は、本章を参考にして「再投資型」に変更することを検討しましょう。

 

4.1. 楽天証券の「分配金コース変更」サービスの概要

分配金コース変更とは、その名のとおり、保有している投資信託の分配金の受取方法を、受取型から再投資型へ、もしくは再投資型から受取型へ変更するサービスのことをいいます。

 

概要は以下のとおりです。

 

■分配金コース変更のサービス概要

申込受付時間 営業日の6時~18時に変更を申し込むと、当日分の分配金から反映
※上記の時間以外は、翌営業日に反映
対象ファンド

「受取型」「再投資型」の両方の取り扱いがある投資信託
※どちらかの分配金コースのみしかない銘柄はコース変更不可

主な注意点

・NISA口座で保有している投資信託は分配金コースの変更は不可
・分配金コース変更は保有全口数が対象で、一部のみの変更は不可

 

 

4.2. 楽天証券の総合口座で分配金コースを変更する方法

楽天証券の総合口座で購入した投資信託は、過去分も含めて分配金コースを変更することができます。

 

なお、筆者が積立設定している銘柄はすべて「再投資型」なので、ここでは「再投資型」から「受取型」に変更することを想定して説明します。基本的には「再投資型」にしておきましょう。

 

STEP1:ログイン後、「分配金コース」に進む

楽天証券にログイン後、「投資信託」>「その他サービス」>「分配金コース変更」の順に進みます。

 

STEP1:ログイン後、「分配金コース」に進む

 

 

STEP2:該当銘柄の「コース変更」をクリック

「投資信託分配金コース変更(申込)」の画面が表示されるので、コース変更をする銘柄の「コース変更」をクリックします。

 

STEP2:該当銘柄の「コース変更」をクリック

 

 

STEP3:暗証番号を入力して「コース変更」をクリック

変更内容が「再投資型→受取型(本来は、受取型→再投資型)」になっていることを確認したら、取引暗証番号を入力して「コース変更」をクリックしましょう。

 

STEP3:暗証番号を入力して「コース変更」をクリック

 

営業日の6時から18時の間に申し込めば、当日分の分配金からコース変更が反映されます。

 

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5. 楽天証券の「分配金コース」に関するよくある質問

楽天証券の分配金コースに関するQ&A
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

最後に、楽天証券の分配金コースに関するよくある質問に3つ回答します。疑問はここで解消しておきましょう。

Q1. 楽天証券のつみたてNISAで銘柄を新規に買付する場合、分配金コースはどこから設定しますか?

積立注文の途中で、次のような「分配金コース」を設定する画面があるので、「再投資」を選びましょう。

 

楽天証券の積立nisaの分配コース設定画面

 

Q2. 楽天証券で分配金はどこから確認できますか?

楽天証券にログイン後、「マイメニュー」>「入出金・振替」のなかの「配当・分配金」から確認できます。

 

楽天証券で分配金を確認する方法の説明

 

Q3. 楽天証券での分配金の受取方法を教えてください。

分配金は、受取型の場合は証券口座の「預り金」に入金され、再投資型の場合は自動的に再投資されます。

 

なお、楽天証券の「投信分配金自動振込みサービス」を設定しておくと、分配金は出金先指定口座(登録金融機関)に自動で振り込まれます。

 

6. まとめ

楽天証券の分配金コースのまとめ
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

この記事では、投資信託の分配金コースでは「受取型」と「再投資型」のどっちのほうがおすすめかを、楽天証券を使うことを想定して解説しました。

 

つみたてNISAなどの長期にわたる資産形成を目的とするなら、複利効果が期待できる「再投資型」を選んでおけば間違いありません。

 

しかし、分配金を受け取ることは必ずしも悪いことではありません。たとえば、継続的な不労所得を得るために、あえて分配金が出る投資信託や高配当ETFを買うことも選択肢の一つです。ただしその場合は、

 

  • 資産形成では再投資型
  • 不労所得を得るなら受取型

 

のように、目的ごとに使い分けることをおすすめします。

 

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