退職金に対する課税ルール
退職金は、「退職所得」として、所得税の課税対象となりますが、税負担が軽減されています。
なぜなら、退職金は「在職中の給与の後払い」的な性格をもつと同時に、仕事のない期間、特に老後の貴重な生活資金となるからです。
なお、「iDeCo」や「小規模企業共済」によって積み立てられたお金を受け取った場合も、退職所得として処理されます。
退職所得の計算式は、原則として以下の通りです。
【退職所得の計算式(原則)】
(退職金額-退職所得控除額)×2分の1
ただし、2022年分から、「勤続年数5年以下」の人については、課税が強化されることになりました。
すなわち、勤続年数が5年以下の場合は、300万円を超える部分の額については「×2分の1」をすることができなくなりました。
【退職所得の計算式(勤続年数5年以下)】
150万円+(退職金額-退職所得控除額-300万円)
これらの計算式における「退職所得控除額」は勤続年数により決まっており、以下の通りです。
・勤続20年以下:40万円×勤続年数 ※最低80万円
・勤続20年超:800万円+70万円×(勤続年数-20年)
このように、現行の制度は、勤続年数が長くなるほど優遇されることになっています。
2022年10月の政府税調で出た「退職所得控除」の改定意見
この現行制度に対し、2022年10月19日の政府税制調査会において、退職所得控除額について勤続年数で差を設けず、一律にすべきという意見が出されました。
その主たる理由は、勤続年数が長い人ほど有利にすると、「雇用の流動化」が阻まれるからということです。
すなわち、現行の退職金制度があることにより、「あと●年勤務すれば退職所得控除額が高くなるから、それまで転職は見合わせよう」「長く勤務すれば退職金が優遇されるからずっと転職せずにいよう」と考えるようになるというのです。