問題の本質は「利益の出にくいPL」
【図表1】「A社のPL」をみて、何か違和感を覚えなかったでしょうか? じつはA社のPLは、致命的ともいえる問題を抱えています。
【図表2】は、保険解約返戻金を特別利益に移動させた後のPLです。営業利益の下をみてください。支払利息の17百万円って異常に多いと思いませんか? 営業利益は20百万円ですから支払利息が営業利益の大半を吹き飛ばしています。現に、支払利息を払った後の経常利益はたったの4百万円です。
支払利息は銀行借入金の利息です。この支払利息には信用保証協会に払う信用保証料も含まれています。
比率でいうと、A社は、支払利息が売上高に占める割合を表す売上高支払利息・割引率(支払利息÷売上高×100)が2.8%もあります。この指標は、不動産業などを除き、だいたい1%を超えると要注意で、1.5%以上になると明らかに過剰債務の会社が多くなります。A社の2.8%は倒産企業レベルといえるほど悪い数値です。
本書で詳しくご紹介しているMcSS(中小企業経営診断システム)で分析すると、A社のように売上高支払利息・割引率が高い会社は、 ほとんどの場合、最下位のEランク(デフォルト企業以下)に判定されます。つまり、利息をたくさん払っている会社は経営破綻する確率が高いのです。
「借金を抱えすぎた会社」が陥る状態
では、なぜ支払利息がこんなに多いのでしょうか?
A社はリーマンショックで業績が悪化した際、銀行返済をリスケして、その後、10年以上にわたってリスケを続けている会社です。
リスケとはリスケジュールの略で、一定期間、銀行に毎月の返済額を減額してもらう手続きのことです。
たとえば、銀行に「資金繰りが厳しいので、毎月100万円の元金返済を、しばらくの間ゼロにしてほしい」と頼んで、返済条件を変更してもらうのがリスケです。通常、変更するのは元金の返済条件だけで、利息は継続して支払います。
銀行返済をリスケする会社を一言でいうと「借金を抱えすぎた会社」です。業績悪化で多額の借金を抱え、その約定返済(毎月の元金返済)に耐えられなくなってリスケを申請します。多くの場合、リスケ申請の時点で「債務超過」に陥っており、銀行から追加融資が受けられなくなっています。
A社の支払利息が多いのは、まず何といっても金融機関からの借入金が過大だからです。そして金利がやや高めに設定されているからです。
ご存じのとおり、現在は「超低金利」と言われる時代です。中小企業の借入金利も例外ではなく、リーマンショックからの十数年で1%近く下がっています。
しかしリスケ中の会社は、たとえば普通の中小企業が年1%程度の金利で済むところを、いまだに3%以上の金利を払っていることが珍しくありません。
金利が高止まりする理由は「需要と供給の関係」です。リスケ中の会社は「複数の銀行を競わ せて金利を下げる」といった交渉ができません。条件がどうあれ、その銀行から資金を借り続け るしかない。一方、銀行としてはリスケ先への貸出を増やすつもりはない。需要が供給を上回る状態なので、金利は下がらないのです。
加えて、最近の銀行は利ざやの確保に苦しんでいることもあり、利息を取れる相手からは、できるだけ多く取ろうとします。「経営が厳しいから、金利を下げてほしい」と申し出ても、ほとんどの場合、断られます。
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